パンデミック以前と同じように、復活祭のちょうど40日前に行う四旬節の伝統の一環として再びカーニバルを開催できることになったのです。
カーニバルでは大きな山車が目抜き通りを練り歩き、この日のために着飾った人々が街に溢れ出します。パレードの開催期間中(今年は延長され、2月いっぱいの毎週末開催)、スーパーヒーローや消防士さんに扮した男の子、プリンセスやアニメに出てくる妖精のコスプレをした女の子が歩きまわり、彼らが投げる紙吹雪や吹流しが街を埋め尽くします。年上の子どもたちはビデオゲームのキャラクターの仮面を付け、大人たちの中には、イタリアや世界の政治状況を風刺して、見るからにそれとわかる政治家の仮面をかぶったりする人もいます。
山車は張り子で作るのが習わしで、この張り子細工は、リグーリア地方に昔から伝わる芸術的伝統と深い結びつきがあります。
カーニバルの期間中、とくにジェノヴァとロアーノでは、カラフルで印象的な、風雅な張り子の彫像を載せ、何らかのテーマを掲げた、あらゆる世代の見物人を虜にする山車のパレードに参加することができます。
職人たちは、シンプルな材料で作った生地を使ってこの洗練された見事な作品を作り上げます。この生地は通常、古新聞などのリサイクル素材と小麦粉や水、接着剤で作られたもので、非常に打ち延ばしやすくて壊れにくく、耐久性にも富んでいます。さまざまな張り子の製作と装飾には、数トンもの新聞紙に数十キロの小麦粉、大量の接着剤、色鮮やかな絵の具といった材料が必要になります。
しかし、何より肝心なのは張り子職人たちの創造性。パレードに参加する各自治体や参加団体は数か月前にそれぞれ異なったテーマを決め、そのテーマに沿った山車が登場するのです。
山車のデザインにはたいへん長い準備期間を要します。動物やカーニバルのキャラクターを使うのが定番ですが、時には皮肉めいた表情のグロテスクな政治家の像にスモークの特殊効果をあしらったりする場合もあります。
私が参加したロアーノのカーニバルでは、カーニバルの公式マスクに街の鍵を受け渡す儀式があり、このセレモニーを皮切りに、イタリア全土から集まったストリートアーティストの団体による豪華なパレードが始まりました。フェイスペインティングやキッズ向けのアクティビティ、ピニャータ(中にお菓子などを詰めたくす玉人形)も用意され、小道具なども配られていましたよ。
このほか、リグーリア地方でほかに類を見ないカーニバルといえば、過去数世紀の間に失われた伝統と深い関係がある、ヴァル・ディ・ヴァーラの中心で開催される「美と醜のカーニバル」です。
このカーニバルの伝統では、男の子は自分のお父さんやおじいさんが使った衣装を身に着けます。「美しい者」たちは、リボンやベルがたくさん付いたカラフルな花柄のドレスを着て、頭にはカラフルな長いリボンやレース、ビーズで飾った布製の帽子をかぶります。
「醜い者」たちはヤギや羊の皮を被り、頭には太く長い角を乗せ、顔は黒く塗るか、黒っぽい色の武骨な仮面で覆い、腰に付けたカウベルをしじゅう揺らしながら歩いていきます。一行は町の通りを練り歩きながら家々に立ち寄ります。家の主が彼らをなだめるためのスナックを用意している間、美しき者たちは家の女性たちに踊りを舞わせますが、醜い者たちはひっきりなしに冗談を言ったりいたずらをしたりします。夕暮れどきになると、みんな集まって夕食をとります。多くの屋台で食べものや飲みものが売られ、街の中に長いテーブルを並べてみんなで一緒に食事をするのです。
パレードの山車
パレードの山車