ジェノヴァ郊外の小さな村、カモーリもそのひとつ。
船乗りや漁師たちが住むこの村はいかにもオーセンティックな雰囲気を漂わせていて、生い茂った海松やユーカリの木々が村中に爽やかな香りを放っています。ここでは毎年5月になると、数日間におよぶ「地中海魚祭り」が開催されます。
例年、このお祭りが開かれるのは5月の第2週の週末ですが、すべてのイベントを含めるとまるまる1週間におよびます。
歴史深いカモーリには伝統に根差した独特の魅力がありますが、それは、ジェノヴァがイタリアの海洋共和国のひとつであった時代に由来しています。
カモーリは伝統と民間伝承の村で、漁師たちもその精神を今に生かすべく、多大な努力を払っているのです。
ピチピチの鮮魚のほとんどは、伝統に則り油で揚げて調理します。地域内外から訪れる人の数は増加する一方なので、魚を揚げるフライパンのサイズも年々大きくなっているのだとか。
3日間の祭りの期間中に、毎日3トンの魚と約3,000リットルもの揚げ油が使われているといいます。
さらに今年は、全面的にサステナビリティを打ち出しています。料理を提供する皿やカトラリーに堆肥化が可能な素材を使用したほか、カモーリ自治体は家庭での使用済食用油の回収率向上を目指す地元の企業に協力を仰ぎ、調理に使われた3,000リットルの揚げ油をバイオディーゼルに変換することにしました。
このお祭り期間中にカモーリを訪れてよかったのは、五感が満たされる体験ができたこと。
お祭りの初日前夜には、漁師の守護聖人であるサン・フォルトゥナートを称える宗教的な儀式が行われます。
聖なる櫃を運ぶ行列
行列は聖櫃を肩に担いで教会から海へ、そして海から教会へと進み、海岸でのかがり火で儀式は終了します。そのあと、花火が打ち上げられます。
このかがり火は、古い家具や漁船を燃やしていたことが起源になっています。
お祭り初日の朝は、フライパンの祝福と、外側は黄金色で中は柔らかい、新鮮なお魚の試食で始まります。
ランチとディナーの時間には屋台がオープンし、この日のために設営した長テーブルで食事を楽しむことができます。
より効率的な運営のために、今年はお祭りにもテクノロジーが活用されていました。
空いている席ならどこに座ってもよく、ボランティアの人が注文を取りに来てくれるレストラン形式になったのです。
料理やドリンクを受け取るために長い行列に並ぶ必要もなく、タブレットを手にしたウェイトレスと子どもたちを含む若いボランティアのネットワークのお陰で、料理の提供からテーブルの片づけまで効率よく運営されていました。
カモーリの屋外レストラン
この種の街のイベントは人ごみとオペレーションのお粗末さが頭痛のタネだったので、こうした変化や優れた組織的運営は大歓迎です。
私が参加した日は次のメニューが用意されていました。
- 魚のフライ
- 海老とひよこ豆のパスタ
- ペストソースのパスタ
- タコを添えたフォカッチャ
確かに料理の選択肢は多くないけれど、これがすべて現地の屋外の仮設キッチンで調理されることを思えば充分だと言えるでしょう。
お祭りの夜を締めくくるのは、美しい花火。おいしい名物料理に舌鼓を打ったあとに海の上空に打ち上げられる花火を眺めるなんて、これ以上に楽しいことはちょっとないですよね。
花火