フェラゴストはラテン語に由来する名前です。「8月」の語源ともなっている初代ローマ皇帝のオクタヴィアヌス・アウグストゥスに敬意を表してフェリアエ・アウグスティ(アウグストゥスの休息)の日が選ばれました。
休息と祝祭のための日として、ローマ皇帝自らが制定したというわけです。
ローマ時代には、帝国のいたるところで祝祭や競馬が行われ、動物たちは野良仕事を免除されて花飾りを施されました。そのほかにも、当時はお祭りの日には農民が地主にお祝いの挨拶をし、代わりにチップを受け取るという風習もあったそうです。
現在のイタリアでは、8月15日は聖母マリアを祝福する国民の祝日です。
ローマ帝国に由来する日であることは忘れられがちなのですが、ローマ式に祝宴を開催して豪奢なお祝いをします。この日は各種イベントやビーチでのパーティが催され、あちこちで花火も打ち上げられます。
元々は宗教にまつわる祝日だったのですが、宗教的な意味合いはとうの昔に失われ、今ではビーチで過ごしたり、友達と一緒にバーベキューをしたりする日になりました。8月15日はほとんどの店が閉店となり、数日前から当日まで、もろもろのサービスも制限されます。
聖母被昇天の式典は、幸いにも地域の小教区が主催する宗教儀式によって今も行われていて、海上で行われる「聖母の行進」(A Madonna du ma、方言で「海の聖母マリア」の意)はとくに見応えのあるイベントです。
リグーリア地方のアルビソーラという村で執り行われるこの行事は、複数の小教区とこの日船を提供するアマチュア漁師のグループによって開催されています。
夕暮れ時、聖母マリアの像は船に乗せられてしっかり固定され、漁師たちが浜に近い桟橋から海へと船を出します。
船は海岸沿いを進んでいき、海中に設置されたキリスト降誕の場面を再現した像(Presepe degli Abissi)に立ち寄ります。
その後、海を祝福し、海上の聖母の行進は人々が待ち構える砂浜に到着します。
マリア像が船から降りて運ばれる際には、ライフガードたちはパドルを掲げて敬意を表します。
聖母を乗せた船の後に船舶やボートが続くことも歓迎されます。
この一連の儀式は小教区の人々に深く親しまれた毎年恒例の行事で、一年を通して行われる守護聖人を祝う祭典のひとつでもあります。
私が実際に目にしたのはアルビソーラで行われたものですが、ほかにもリグーリア地方のいくつかの漁村でボートを使った海の行進が開催されています。
まるで絵画のような海上での聖母の行進
ジェノヴァ市内では、街の中心部から聖なる場所まで練り歩く行列も行われています。
17世紀末から第二次世界大戦開戦まで200年以上も続いたこの伝統は、2001年に再開され、今もなお開催されています。
毎年、聖母が出現したとされる8月15日の朝5時ちょうどに、大勢の教会の信者たちがマドンネッタ(「小さな聖母マリア」の意)の聖地に集合します。その後、聖母像を街の中心地まで運び、再び聖地へと戻ってくる行進が行われます。