看板も店名もなく、船内へと誘う目印は何もないけれど、この場所を見つけた人はほかには類を見ない場所へと足を踏み入れることになります。
この書店を歩き回ると、偉大な古典作品から旅のエッセイまであらゆる種類の本が目に入ってきます。いたるところに散りばめられたたくさんの絵や、海やジェノヴァ港に直結した独特の位置関係により、ここでしか味わえない雰囲気にどっぷり浸ることができます。
無限の水平線を有する海は、常に自由への欲求に刺激を与え、詩人や作家の創造性を掻き立ててきました。彼らは一本のペンを使って、海の上あるいは海の中で繰り広げられた勇敢な旅のストーリーに命を吹き込んできたのです。つまるところ、よく知られたたとえのように、本を読むことは心のロープを解き放ち、想像の大海原を航海するようなものなのですね。
児童書コーナーは限られたスペースながら品揃えがとても豊富で、よく手入れされています。子どもたちはここに来ると、子ども向けの本の色彩やデザイン、そして魅惑的なロケーションに引き込まれずにはいられません。
もうひとつこの書店の素晴らしいセクションを挙げるなら、ジェノヴァとその周辺エリア、さらには海全般に関するコーナーでしょう。私は緯度が異なるいろんな海のそばで生まれ育ってきたため、海の驚異や旅の本がある一角に引き寄せられずにはいられませんでした。
歴史的に複雑なこの時代において、誰もが問題ごとは陸に置きざりにし、生きて語らうべき経験を求めて舫いを解いて冒険の旅に出たい、という思いに駆られたことがあるのではないでしょうか。
ジェノヴァ県にはほかにも、カモーリという美しい村に海専門の書店があります。
ここの店は書棚にはもちろんのこと、ジェノヴァならではの魅力あふれる建物にも本が並んでいます。
主に中古本や絶版の本が並び、カモーリとジェノヴァ市の歴史や不思議を集めたコーナーが最も広いスペースを占めています。本に囲まれて大海が望める開放的な窓は、ここで最も多く撮影された場所のひとつです。
ゴージャスな水上の書店
リグーリア州ジェノヴァ市の東にあるラ・スペツィアの街にも、海専門の私設図書館を有するロマンチックなスクーナー船があり、見学ツアーに参加する子どもたちに開放されています。船上朗読会や作家との交流会、一般に開放されているセーリング・ブックショップなど、読書と海を愛する人々が年齢を問わず楽しめる取組みが長年にわたり数多く行われてきました。
ここには寓話からエッセイ、ノンフィクション、教科書、専門書まで、様々な本が並んでいます。
本の売り上げは、運営にあたっている協会が主催するチャリティー活動や教育的セーリング活動のサポートに使われます。
リグーリアやジェノヴァの人々にとって海はいつでも非常に大切な存在です。それは第一に国際貿易の点で、第二に観光地として、常に恩恵を授けてきたからです。
現在でも、リグーリアは重要な商業港であるとともにフェリーやクルーズ船が寄港する名の知れた旅客港でもあるのです。