びっくりするほどおいしいメインディッシュのメニューであるのはもちろん、伝統的なリグーリア料理を代表する一品なので、イタリアではこれ以上の解説は不要なほどなのですが、海外の読者の皆さんに向けて説明しようと思います。
チーマは、ポケット状にした仔牛の胃袋にドライフルーツや野菜、ミックススパイスを詰めてスライスした料理です。
正式には「チーマ・アッラ・ジェノヴェーゼ(Cima alla Genovese)」という名のこの料理は、どちらかと言うと粗末な原材料(レシピの起源が古いことを意味します)を加工して見事な料理へと生まれ変わらせ、ハーブやスパイス使いの妙によって淡泊な風味から豊かな味わいを引き出せることを証明するような存在です。
チーマの肉詰め(ジェノヴァの方言では「A çimma pinn-a」)は、リグーリア州の東海岸や西海岸でいろんなバリエーションがありますが、肉と卵のフィリングにホウレンソウやフダンソウを加えることが多いようです。
チーマは、現在では繁栄のシンボルとして元日のために作られる料理になっています。人々が仕事で忙しい今の時代に、日々のメニューとしては準備に手間がかかり過ぎるということもあるでしょう。
また、家族みんなでのチーマ作りは、世代を超えて過ごす賑やかなひとときでもあります。
元日のメニューにはその他に、七面鳥の肉を野菜とともに布に包んで調理するタッキーノ・アッラ・ストーリオーナ(Tacchino alla storiona)や、ナタリーニ(Natalini)という長いマカロニをミートボールやソーセージと一緒に雄鶏のスープで煮込んだスープパスタなども登場します。
リグーリアのホリデーシーズンに作るこれらの料理は、金運をアップさせる縁起物とされています。伝統的には、クリスマスイブの夕食やクリスマス当日の昼食に出されるメインディッシュでしたが、時代を経るに従い、ラビオリにその座を取って代わられました。今日では、こうした料理は元日やクリスマスホリデー中の他の日に供されています。
クリスマス休暇中には、リグーリア地方の伝統的なストリートフード、ジェノヴァ風スティック(Stecchi genovesi)を売る屋台も見かけます。これは、鶏や仔牛、牛の肉を混ぜ合わせたタネを揚げた串焼きで、風味を良くするために生地にハムを入れることもあります。タネの外側に小麦粉とパン粉をまぶして、こんがりと揚げます。
興味がある方のために、チーマのレシピを以下に載せておきますね。
【材料(4人分)】
仔牛のバラ肉 1㎏
卵 3個
塩、コショウ
レタスなど葉物野菜 適量
肉から取ったスープ 2リットル
乾燥マッシュルーム 20g
ミックススパイス 小さじ1
マジョラムの葉 小さじ1
松の実 大さじ1
ニンニク 1かけ
エンドウ豆 50g
仔牛肉 100g
仔牛の胸腺 100g
【作り方】
フライパンにバターを溶かし、仔牛肉と胸腺を入れて10分ほど加熱したら、塩を振って胸腺を小さくカットする。マッシュルームは10分ほどぬるま湯に浸しておく。その間に、皮をむいたニンニクをみじんに切りにし、皿に卵を溶きほぐす。マッシュルームが戻ったら汁気をよく絞って細かくカットする。
ボウルに茹でた肉、エンドウ豆、松の実、みじん切りにしたニンニクとマッシュルーム、各種スパイス、マジョラム、パルメザンチーズを混ぜ合わせ、溶き卵を加えたら、塩とコショウで味を調える。木ベラを使って、均一になるまでよく混ぜ合わせる。仔牛のバラ肉に切り込みを入れ、フィリングをポケット部分に詰めたら開口部を料理用の糸で閉じる。
以上の準備ができた肉を鍋に入れ、スープを注いでコンロで1時間ほど煮込む。途中で破裂しないよう、ときどきフォークの先端で肉をつついて穴を開けておく。鍋に蓋をかぶせ、火を最小限に弱め、さらに2時間煮込んでいく。
加熱が終わったら、冷ましてからスライスして皿に盛りつける。レタスなどお好みの葉物を添えて、どうぞ召し上がれ。