ジノヴェーゼ・ペスト世界選手権はリグーリア州都で開催されます。前年の年末に行われる選考会および予選を勝ち抜いたシェフたちが世界チャンピオンの座をかけて決勝戦に臨みます。
この選手権には、世界各国のアマチュア料理愛好家も参加可能です。参加者には常に最高品質の材料と最適な道具が提供され、タイトルを授与する専門家からなる審査員たちの目の前でペストを調理します。お楽しみは選手権の戦いだけではありません。10日間にわたるイベントでは、リグーリア州の数多くのレストランがパートナーとして参加し、試食やクッキングショー、特別価格でのメニュー提供なども行います。もちろん、それらすべての料理にペストが使われています。
ペストの起源は古く、ローマ時代にはすでに詩人・ウェルギリウスがチーズ入りペストの一種であるモレトゥムについて語っています。最古のバジルのペスト(ラテン語の「Ocimum basilicum」と呼ばれていたようです)のレシピの登場は19世紀に遡りますが、それに先駆けてジェノヴァ海洋共和国時代のリグーリア州では、アリアータ(クルミとニンニクのソース)のようなペースト状のソースがすでに一般的に作られていました。
ジェノヴェーゼと呼ばれる品種のバジルも同様に古くから栽培されていて、イタリアの青果物として原産地呼称制度により保護されています。リグーリア地方全体で栽培されていますが、最古の栽培地はジェノヴァにもほど近いプラという地区です。
小~中サイズの淡い緑色の葉を持ち、繊細な香りを放つジェノヴェーゼバジルは、一般的には春に種を撒き、雨水で育てるのが最良とされています。
オリジナルのレシピを紐解くと、多くの人の想像とは違って、ジェノヴェーゼ・ペストの材料にはプラ産バジルの若葉、とくに繊細な風味を持つリグーリア産エクストラヴァージン・オリーブオイル、イタリア産松の実、パルメザン・チーズ、ペコリーノ・チーズ、リグーリア産ニンニク、そして海水から作った粗塩の7つが用いられます。
ペストは、地元の観光局がツーリストを呼び込む上でも一役買っていて、ジェノヴァではペストに関するツアーがたくさん開催されています。例えば、路地を探検しながらペストを使ったブルスケッタ(トーストしたパン)や冷たいパスタサラダの試食をしたり、地元の生産者からペストを購入したり、伝統的製法を見学する、といったツアーが用意されています。また、臼を使った「グリーンソース」の作り方を学ぶ体験ツアーもあり、石臼を買って持ち帰ることもできます。
昨年11月には、空気を入れて膨らませたビニール製の巨大なバジルの葉とすり鉢がロンドンのテムズ川を艀で航行しました。こちらは、リグーリアの料理やワイン、そしてますます国際化が進むこの地方全体の観光プロモーションの一環として開催されました。
松の実入りのジェノヴェーゼ・ペスト
観光客を惹きつける選手権はこれ以外にもあります。それは、リグーリア地方とジェノヴァ市、ジェノヴァ商工会議所が共同開催するパンドルチェ選手権です。シロップ漬けのフルーツを練り込んだ甘いパン、パンドルチェ・ジェノヴェーゼは代々口伝えでレシピが継承されてきたため、パンドルチェの貿易は地元の歴史的レシピを象徴するだけでなく、輸出を通じてリグーリア州の卓越性を世界に示すことにもつながりました。
リグーリア料理の伝統において、最も高く評価されている製品のひとつであるパンドルチェに注目が集まるこのイベントの成功は、私たちにとっても喜ばしい限りです。願わくは、ペスト世界選手権に続いてパンドルチェ選手権が定期開催となり、それぞれ交互に開かれるようになってほしいものです。われらがリグーリアのプロモーションは、今後ますます、食とワインをアピールしたツーリズムとのつながりを強めていくことでしょう。
パンドルチェ