ひとつ目は「ブラッティーノ(burattino)」と呼ばれる手人形で、舞台の下にいるパペッター(人形遣い)が人形に手を入れて操ります。パペッターは人形の声も担当し、物語を伝える役を果たします。
ふたつ目は、一般的にマリオネットとして知られる「マリオネッタ(marionetta)」という人形です。こちらは、四肢と頭部に取り付けた糸で人形を操ります。パペッターは上から糸を操って人形を動かし、ストーリーを語りながらキャラクターの声も演じます。通常、人形は人物になぞらえた形をしていてミニチュアの衣装を身に着けています。
ジェノヴァのカンポモローネにある、マリオネット人形に特化した博物館に家族で行ってきました。
この博物館は、保存状態の良い、美しい古代の宮殿を利用した自治体庁舎内にあります。入場は無料で、展示を通して芸術と大衆の伝統を普及させるべく一般公開されていて、時々ライブショー等も開催されています。
1階にいくつかの展示室があるほか、書店や人形劇を上演する部屋もあります。
マリオネット博物館に展示されているのは、19世紀にアンジェロ・チェンデレッリが収集したコレクションです。
多岐に亘る豊富な資料以外にも、コレクションには70体の人形や数百の小道具も含まれています。
劇場用スペースは、19世紀には貴族の家庭が、20世紀の初頭には富裕な中産階級の人たちが使っていた場所で、とても趣があります。何年もかけて修復され、職人たちの精巧な技と、設置されている様々な工芸品が示す調和と演劇性とが凝縮されています。
東洋へ旅をした人たちやジュール・ヴェルヌの「海底二万里」の再現、イタリアのコメディア・デラルテの召し使いなどの代表的な人形たちは見逃せません。
マリオネット芸術に関する書籍や台本、出版物なども数多く展示されています。
完全入場無料のうえに寄付も受け付けていない博物館なのに、なにか聞きたいことがあれば、常駐している知識豊富なスタッフがどんな質問にも答えてくれますよ。
1996年の開館以来、この博物館は19世紀に活気を呈し、一般大衆に愛されたこの芸術の保存と普及を目指してきました。
しかし、現在でもいくつかのマリオネット劇は上演されてはいますが、1950年代になるとこの伝統は衰退し始めます。
手人形劇も同様に活気を失いつつありますが、とくに夏の数か月にイタリア各地で設置される巡回劇場では今でも多くの演目(おもに子ども向け)を見ることができます。
ジェノヴァでは、街の主要な劇場のひとつで手人形劇の常設公演も行われています。俳優たちは手人形を使いながら、ストーリーを演じます。
さらに、人形制作のラボもあります。ここでは、子どもたちが人形づくりをしたり演技に参加したりして、教育の場のひとつとしての機能を果たしています。
人形を通して子どもたちは想像力を率直に表現できるし、現実の世界ではできないような身振りや手振りをすることもできます。
これは、子どもにとっても大人にとっても、出会いや社会活動への参加、そして表現力を養うための教育的な道程になります。
人形を使ったこの演劇プロジェクトは、情熱ある教育者とクリエイティブなディレクターの共同作業によって生まれました。あらゆるワークショップやプロジェクトに子どもからお年寄りまで参加でき、すべての人々が昔から夢見てきた「想像の世界で、現実の生活から生まれたものを創造する」という夢を実現することができるのです。