• 2024.07.18
  • ブログ リグーリア-ワイン街道
バローロ(Barolo)はイタリアでもとくに有名かつ大切な赤ワインで、ピエモンテ州ランゲ地方で栽培されるブドウの至宝とも呼ばれています。
リグーリア州では、この地域を「うちの裏庭」と捉えている節があります。週末にちょっとお出かけするくらいの近さにありながら、沿岸エリアやジェノヴァの街の喧騒からは遠く離れているロケーションなのです。

現在、バローロはランゲ地方のいくつかの自治体で生産されています。このワインは、有名なバルバレスコ(Barbaresco)というワインにも使われる、イタリアで最も高貴なブドウのひとつ、ネッビオーロ(Nebbiolo)から作られています。
ネッビオーロという名前は、ラテン語の「ネッビア(nebbia、霧)」に由来します。この名が付いたのは花を付けた房が繊細な霧のブランケットにくるまれたように見えるからとも、とくに冷え込む秋の明け方にはなだらかなピエモンテの丘が濃い霧に覆われるからとも言われています。
立派な名前が付いていますが、元々このブドウの生産地はそれほど広くはありませんでした。イタリア北部のワインの生産地(ピエモンテ州を中心として、ヴァッレ・ダオスタ州やロンバルディア州)でのみ、数百年に亘ってこの高貴なブドウからワインが生産されてきました。
もちろん、とりわけ最近はネッビオーロも世界各地で栽培されています。しかし、このワインが本物として高く評価されているのは、何世紀にも亘ってブドウが環境に適応してきたからこそ。イタリア北部を故郷に持つこのワインの優美さと複雑さを持つ味わいは、別の場所では決して作り出すことはできません。

クーネオとアスティの間に広がる、とりわけ栽培に適した土地で生まれたのがバローロです。森や野原に覆われた起伏に富んだ丘陵地帯で、ブドウが周囲との相乗効果を得ながら生育するのに適した場所と言えるでしょう。2014年には、この地域はユネスコ世界遺産に登録されました。
バローロは当初、現在のような辛口の赤ワインではなく、甘いワインとして作られていました。それが変化したのは19世紀半ばでしたが、風味が変わった理由にはいくつかの説が存在します。
そのひとつは、カミッロ・ベンソ・カヴール伯爵がワインの質を上げるためにフランス出身の酒造業者を招いた結果、現在私たちが味わっている辛口ワインになったのではないか、というもの。
この辛口バージョンのワインはとくにピエモンテの貴族たちに非常に好評で、「バローロは王のワインであり、またワインの王者でもある」というキャッチフレーズが付けられたほどでした。しかし、近年この説は「カヴール伯爵が質の向上を依頼したのはフランスではなくイタリアのワイン醸造者であった」と主張するワイン史研究家たちによって異議を唱えられています。

ランゲのご自慢はワインだけではありません。
ランゲの中心部にあるのはアルバの街。ここは世界一として名高い白トリュフの産地で、地元の名物料理にはトリュフが散らしてあります。ランゲ産トリュフのお値段は市況や品物の種類によって様々ですが、珍重される白トリュフだとキロ当たり4,000ユーロ(約68万円)にもなります。
ここでは毎年、国際的にも有名なアルバ白トリュフ祭りが開催され、ヌテラ(Nutella)の工場もあります。実際、この周辺で収穫されるヘーゼルナッツの大部分はこの工場へと運ばれ、あの有名なスプレッド・クリームの材料になるのです。

アルバには中世の街並みが残り、塔や要塞、大聖堂が街の美しさを引き立てています。
ピエモンテ州ランゲを訪れるのに最適な時期は、遅めの春かブドウが収穫期を迎える秋でしょう。
9月から11月にかけては、景色や色彩が日に日に変化します。ブドウの葉や周囲の木々が黄色や黄金色、赤色に染まり、丘という丘の景色が変わっていく様子を楽しめます。


特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申( さる )
  • 性別女性
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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