邸宅の中には入場券を購入すれば通年見学が可能なものもあれば、通常は施錠されているものや、政府関連行事でのみ使用されているものもあります。
というのも、文化省の保護を受けているとはいえ、これらの豪華な邸宅のいくつかは現在も地方貴族が所有している私邸だからです。個人の所有ではない邸宅はイタリア政府が取得し、政府機関のオフィスが入っています。
「ロッリ・デイズ(Rolli Days)」と名付けられた3日間、ガリバルディ通り(Via Garibaldi)沿いに建つ12の邸宅のうち11軒の館内を見学することができます。併せて、街じゅうに点在する40か所ほどの別荘なども公開されます。
天才画家パウル・ルーベンスにもインスピレーションを与えたと言われる、歴史も魅力も備えたジェノヴァの邸宅群は、2006年から年に2回、通常は春と秋に無料で一般に公開されています。
著名な芸術家であるルーベンスは、ジェノヴァの邸宅群(Palazzi di Genova)に関する書籍を出版し、この邸宅群がヨーロッパの邸宅として最も優美で完璧であると考える理由を表や絵、図面を用いて解説しています。
ロッリ・デイズの期間中に邸宅を訪問するのをお勧めしたいのは、完全に無料だからというだけではなく、専門ガイドの案内で宮殿の歴史的、建築的、芸術的な側面を探れる機会でもあるからです。ルーベンスの目を通してジェノヴァの黄金時代に身も心も浸れる、絶好のチャンスというわけですが、それだけではありません。
科学の知識を有するスタッフや大学生、若い専門家たちが訪問者に専門知識を提供してくれる、歴史と芸術、美が探求できる3日間なのです。
2024年のロッリ・デイズには、2つの新しい体験が登場しました。ひとつめは「パラッツォ・アルキビスコヴァーレ(Palazzo Arcivescovile、大司教の宮殿)」の公開です。タペストリーやフラスコ画に加えて、18世紀に非宗教的な慈善事業として設立されたコンサバトリー(多目的スペース)があり、教会や絵画ギャラリー、ジェノヴァ派による素晴らしいキリスト降誕画、貴族のフィエスキ家やコンサーバトリーに関する重要なアーカイブなども見学できます。
ふたつめは、専門家ガイドによる案内のほか、多言語対応の観光ガイドによる案内も予約可能になりました。しかも、すべて無料で利用できます。ジェノヴァ市は、ユネスコ遺産を気軽に訪れ、楽しむ機会を障害のある人を含むすべての市民に提供することを目標に掲げています。
毎回ロッリ・デイズでは至るところで演劇やミュージカルが開催され、街全体が文化と感動に包まれます。こうしたイベントは有料のものあれば、完全無料で楽しめるものもあります。
例年、秋のロッリ・デイズでは芸術的なテーマに沿って建物の内部にスポットが当てられますが、春の開催では庭園や屋外がテーマとなります。
今年の春のロッリ・デイズでは、ジェノヴァが栄華を極めた数世紀にわたる時代の文化景観を彩った特別な邸宅に焦点を当て、記念碑的建造物を通して街と訪問者を結びつける、またとない機会を提供してくれました。
このイベントは、ユネスコ遺産を、かつての迎賓館目録に掲載された邸宅群だけでなく、街の歴史的邸宅とも関連させて捉えることの重要性を強調しています。
ルーベンス自身も、この邸宅群と街との相乗効果を認識し、邸宅群をジェノヴァの記念碑的な役割を果たす不可欠な一部と捉えていました。
噴水や花、植物が訪れる人の時間をいっそう豊かにし、より楽しく没入感のある体験を提供してくれます。
前述したとおりガイドツアーは無料ですが、イベントのホームページでの事前予約が必要です。
アートに彩られた美しい邸宅群