王宮は、ジェノヴァのプリンチペ広場(Genova Piazza Principe)駅からすぐのところにあり、ジェノヴァ市内にある40軒の邸宅とともに「ジェノヴァ:レ・ストラーデ・ヌオーヴェとパラッツィ・デイ・ロッリ制度」としてユネスコの世界遺産に登録されています。現在、王宮の内外の一部は王宮博物館(Museo di Palazzo Reale)として公開されています。
この建物は、ジェノヴァの名門バルビ家によって17世紀半ばに建てられました。当初は、邸宅中央部が高くそびえ、海に向かって両翼が伸びていました。ドゥラッツォ家がこの邸宅を継承すると、中央部が拡張され、カーテンウォールや空中庭園が付け加えられるなど、大規模な改修が行われました。
しかし、この建物が「王宮」を名乗るようになったのは19世紀になってから、サヴォイア家のカルロ・フェリーチェ王が宮殿を買い取り、王族の夏の離宮として改造することを決めた時のことです。この時代に改修と改装が行われ、現在の姿になりました。
王宮は1900年代始めまでサヴォイア家が所有していましたが、ヴィットリオ・エマヌエーレ3世の時代に国へと寄贈されました。

建物の2階は一般に公開されています。元々、このフロアは晩餐会や接見のためだけに使われるメインフロアで、1階が居住スペースとして利用されていました。しかし、2階の装飾の美しさとジェノヴァ湾の眺望の良さに魅了された王家の人々は、このフロアを居住スペースに変更しました。フレスコ画やスタッコ(化粧漆喰)、調度品などには、新古典主義からバロック、そしてロココまで、王宮が経てきた時代の装飾様式が混在しています。
このフロアで最も美しい部屋の一つは、元々区切られていた二つの部屋を一つにした広大な空間です。タペストリーや家具、カーテンには部屋全体のテーマとなっている植物のモチーフが施され、金と赤の色彩が際立っています。特に白鳥のデザインに細心の注意が払われており、肘掛け椅子のアームレスト、鏡の額縁、カーテンの留め具、スツールの脚、ドアノブなど、部屋の様々な装飾に使われています。
これらの調度品を選定したのはカルロ・アルベルト王で、重要な客との接見に使用されたこの部屋にあるすべての肘掛け椅子のアームレストには、王のイニシャルが刻まれています。ここは臣下との接見専用の部屋であり、中央にはカルロ・アルベルト王のイニシャル入りの大きな天蓋が吊られ、その下の王座には王冠も据えられています。この部屋でも金色が目を引き、王座の肘掛けにはサヴォイア家のシンボルである獅子のモチーフが刻まれています。

鏡の間
二つの部屋が、鏡に映ったように互いに対称に配置されています。どちらの部屋にも王家を象徴する色である赤と金色が用いられています。この部屋を訪れた人は、一つの奇妙な点に気が付くでしょう。ベッドがかなり短いのです。これは、王家の人々が消化に良い姿勢だと信じて、座って眠る習慣があったためだそうです。
女王の部屋には、夜用の時計が置かれています。この時計の内側には、真夜中でも時刻を確認できるようにオイルランプやロウソクを入れるためのスペースが設けられています。
鏡の間は、王宮で最も美しい部屋の一つとされています。この部屋はドゥラッツォ家の要望により造られ、彼らの名誉と富を如実に物語る場所となっています。部屋の主役である鏡の配置がこの空間の基本的なデザインコンセプトを形成しています。
バッカスやサテュロス、アポロなどの彫刻が鏡と交互に配置されています。部屋の奥にはジャン・ロレンツォ・ベルニーニの名作「プロセルピーナの略奪」を想起させる彫刻も置かれています。天井のフレスコ画には、ヴィーナスと、「愛は盲目」を象徴する、目隠しをしたキューピッドが描かれています。
ロッリ・デイズ(Rolli Days)の期間中は、通常は公開されていない、世界遺産として保護されている邸宅の多くを見学することができますし、普段は有料の王宮にも無料で入場できます。
