ジェノヴァではストリートアートがとても盛んです。それは、多くの国際都市と同様に、近年、野外アートが殺風景な街の風景に息吹を与える最も効果的な手段と考えられているからです。
ジェノヴァの街を歩くと、至るところで壁画やストリートアートを目にします。巧みな筆遣いや色使い、そしてアーティストたちの想像力のおかげで、家々のファサードや高架下、公共の庭園を囲む壁面、階段やお店のシャッターなどが小さなアート作品へと生まれ変わっています。
ジェノヴァ市民の間で賛否両論が寄せられている高架道路「ソプラエレヴァータ(Sopraelevata)」の橋脚にも壁画が描かれています。ジェノヴァ中心部とポルト・アンティコ(Porto Antico)を結ぶこの道路は、フォーチェ(Foce)地区からサンピエルダレーナ(Sampierdarena)地区のジェノヴァ・オヴェスト(Genova Ovest)料金所まで、市街の大部分を横断しています。
「ウォーク・ザ・ライン(Walk The Line)」と名付けられたこのソプラエレヴァータの橋脚壁画プロジェクトは、リグーリア州の州都におけるストリートアートの本質を象徴する一例に過ぎません。さまざまなスタイルの何百もの作品がジェノヴァの街を彩り、その多くは国際的にも名を馳せる有名な壁画アーティストたちによって手がけられたものです。
ジェノヴァに数多く描かれている壁画の中でも、芸術的かつ象徴的に最も重要なものは、間違いなくチェルトーザ地区のストリートアートプロジェクトの一部をなす作品群です。これらは自治体の主導により制作されましたが、民間のスポンサーが繰り返し全面的に資金を提供し、いわば作品の「里親」となりました。
チェルトーザの壁画すべてに共通するテーマは明白で、物理的、経済的、社会的な空間としての地域と、そこに暮らす住民の日常生活との関係、そしてモランディ橋の崩落がもともと困難を抱えていた住民の生活に及ぼした影響です。
2018年8月14日に起こった大惨事は、ジェノヴァのヴァルポルチェヴェーラ渓谷に位置するこの地区およびその周辺地域における生活の不安定さを浮き彫りにしました。この地域はかつて無秩序な工業化の波に飲み込まれましたが、都市計画が歪められるほど拡大した産業はその後、この地を去りました。
ジェノヴァの壁画は、芸術と美を通じてチェルトーザ地区の住民に対する贖罪の願望を象徴しているとも解釈できます。また、従来の観光名所から離れた「もうひとつのジェノヴァ」を探求したい観光客を呼び込むことを目的とした試みでもあります。
チェルトーザ地区の壁画プロジェクトの目指すゴールは確かに野心的であり、その努力は賞賛に値します。しかし、目を見張るような美しいストリートアートは街に彩りを添えても、この地域の本質を変えたり、荒廃を消し去ったりすることはできません。
注目すべき点は、壁画の制作に多くの地元の若者が参加し、自分たちの家の周囲に広がる灰色で陰鬱な通りに少しでも美しさを加えられたことを喜び、熱心に取り組んでいたことです。
アーティストたちの協力を得て、チェルトーザの若者たちはいくつかの店のシャッターに絵を描き、素晴らしいミニアートを創り出しました。地元の若者自身が手がけたからこそ、これらの作品はさらに大きな象徴的意義を持っています。
