• 2025.12.03
  • ブログ・リグーリア-ジェノヴァのエレベーター
ジェノヴァの街は、幾重にも連なる丘が地中海に向かって緩やかに傾斜するという独特な地形の上に築かれているため、人々の行き来を助けるための地形に即した道路網や、物流を支える高度な交通設計が求められてきました。
街中に設けられたエレベーターは、ジェノヴァでは欠かせない公共交通手段です。高台への迅速な移動を可能にするだけでなく、街を見下ろす絶好の眺めを楽しむこともできます。
現在も稼働しているエレベーターの中でも特におすすめしたいのが、カステレット・レヴァンテ・エレベーター(Castelletto Levante elevator)、クエッツィ・エレベーター(Quezzi elevator)、地元民にはバルビ・リフト(Balbi Lift)と呼ばれているモンテガレット・エレベーター(Montegalletto elevator)、そしてヴェンティ・セッテンブレ通り〜モヌメンターレ橋エレベーター(Via XX Settembre-Ponte Monumentale elevator)の4つです。
私自身はまだ3つ目と4つ目のエレベーターにしか乗ったことがないので、最初の2つについてはまた別の機会にご紹介しようと思います。
ジェノヴァには12基のエレベーターがあり、ほかにも坂道や橋梁、トローリーバス、高架橋、路面電車、ケーブルカーなど、市民の移動を助けるさまざまな素晴らしい交通手段が整えられています。中でもイタリア国内はもとより、世界的に見ても例を見ない独特の移動手段が存在します。それは本来、ある高層ビル群へのアクセスのために作られたものですが、現在では(少なくともインターネット上では)その建物よりも有名になっています。
その建物とは、19世紀の裕福な探検家で海軍大尉だったエンリコ・アルベルト・ダルベルティス(Enrico Alberto d'Albertis)よって建てられたネオゴシック様式のダルベルティス城(Castello d’Albertis)です。現在、この城の内部はリグーリア州を代表する、世界の文化を紹介する博物館となっています(こちらの博物館については過去にブログで紹介したことがあります)。


バルビ・リフト

ダルベルティス城を訪れるには、前後上下だけでなく左右にも動くバルビ・リフトを利用する必要があります。
このユニークなリフトは、ジェノヴァ・プリンチペ広場駅(Genoa Piazza Principe)の上方にあるバルビ通り(Via Balbi)へアクセスするために建設され、通りにちなんで「バルビ・リフト」と名付けられました。
世界でも類を見ないこの乗り物が開業したのは1929年のことです。2004年には、歴史地区とその周辺地域の再開発プログラムによる資金提供を受けて近代的な姿へと改修されました。
最初の約300メートルは、ケーブル駆動によってキャビンが水平に移動します。その後、モーター付きタイヤを備えた方向転換ポイントに到達すると、キャビンは垂直移動に切り替わります。
続く高さ70メートルの垂直区間では、キャビンは一般的なエレベーターのように上下に移動します。
昇降路が2つあるため、同時に2台のエレベーターの運行が可能で、キャビンは垂直区間と水平区間を交互に走行します。
この交通システムは非常に珍しいだけでなく、ジェノヴァ駅の上にあるモンテガレットに住む人たちの移動を格段に便利にしました。2つのキャビンで1時間に最大800人を輸送することができます。
前述の通り、このエレベーターを使えば、ジェノヴァの重要なランドマークのひとつであるダルベルティス城へも行くことができます。民俗学者であり慈善家、また冒険家として名を馳せたエンリコ・アルベルト・ダルベルティスも、きっとこんな便利な交通手段を望んでいたに違いありません。



バルビ・リフトのキャビン内部

もうひとつのエレベーター、ヴェンティ・セッテンブレ通り〜モヌメンターレ橋のリフトは、街の中心部に最も近い場所にあります。それなのに、あまり知られていません。このリフトは、ジェノヴァを代表するショッピングストリートのひとつであるヴェンティ・セッテンブレ通りと、その上方に位置する住宅街とを結んでいます。わずか23メートル移動するだけで、ジェノヴァ市民をはじめ多くの人に親しまれているこの通りを、全く異なる視点から眺めることができます。ここからは喧騒を離れて建物や行き交う車、そして隠れたモニュメントをゆったりと眺められます。頂上からはモヌメンターレ橋を望めるほか、ジェノヴァ最大の病院、ガリエラ病院(Galliera Hospital)へも簡単に行くことができます。


バルビ・リフトのキャビン

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申( さる )
  • 性別女性
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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