• 2016.01.18
  • ポートランドの自転車事情
他国の人々にとってはアメリカの他の都市よりも知名度が低いかもしれませんが、ポートランドは小さいながらも大きな魅力を秘めた街です。オレゴン州、アメリカの太平洋沿岸北西部に位置するこの都市は、約60万の住民を擁しています。ポートランドはローズ・シティ(Rose City=バラの街)、スタンプタウン(Stumptown=切り株の町)、ブリッジタウン(Bridgetown=橋の町)、ポートランディア(Portlandia)、PDX(空港コード)など、いくつもの愛称を持っています。

ポートランドは言葉本来の意味で緑色の街です。年間を通じて10か月は雨が降るほどの多雨な土地で、そのおかげで数えきれないほどある公園の緑はいつも青々としています。そのため都心部に住む人々も、自然を身近に感じています。かつては工業の中心地であったポートランドですが、近年アメリカで最も緑豊かな都市に選ばれました。ポートランドの住民は、ここを持続可能で環境に優しい都市にするために数十年尽力して来ました。多くの旧工業用地を緑のオアシスに変えたり、今も増え続ける自転車利用の呼びかけなどによって、その目標を達成したのです。

Photo 1 緑あふれるポートランドは自転車天国
Photo 2 道路に自転車専用レーンがあることがはっきり表示されている


ポートランドが自転車利用者に優しい都市に生まれ変わろうとした本来の主な目的は、持続可能性と地域住民の健康(空気の品質)維持だったのですが、ポートランドで自転車は今や一大ビジネスに成長し、この10年ほどの間、町の至る所で数多くの自転車ショップや貸自転車業者、自転車ツアーを主催する会社が開業しました。
現在のポートランドには、バイクラックや特注自転車専用の高級アクセサリーを製造する会社も含め、100以上の自転車関連企業があります。名前入りの自転車をハンドメイドで作るショップもあれば、古いリサイクル二輪車からオーナメントやアートオブジェを制作する業者まであります。

Photo 3 ガイド付き自転車ツアーは一年中行われている

テーマ別の自転車イベントや自転車レースが年間を通して開催され、旅行代理店はポートランドとその近郊エリアを走る各種自転車ツアーを組んでいます。
毎年6月に行われるペダルパルーザ・バイク・フェスティバル(Pedalpalooza  bike festival)では、200以上のユニークなテーマに沿った自転車のライド(走行)やイベントが見ものです。ファンキーな衣装に身を包んで自転車に乗る企画、一輪車の槍試合や夜間走行など、その内容は盛り沢山です。難易度が高いものや競争色の強いものもあれば、楽しくユニークな企画(例えばウェディングドレス着用で行うブライダル・ライドなど)、ただ風変わりなイベント(ポートランド警察の警護のもと、1万人以上の全裸・半裸のサイクリストが街中を自転車で走るワールド・ネイキッド・バイク・ライドなど)も揃っています。

Photo 4 ペダルパルーザの期間中は多くのユニークなイベントが開催される

ポートランドの中心部には、ズーボンブ(Zoobomb)を象徴する小型自転車を表したモニュメントがあります。ズーボンブは年に一度行われる伝統行事で、10代後半の若者が驚くほど小さな自転車に乗ってポートランド動物園近くの急勾配を夜間に下るというものです。活躍した小型自転車は、イベント期間が終わるとモニュメントに縛り付けられて翌年の開催を待つのです。

Photo 5 ダウンタウンのズーボンブ用ミニバイク

米国で最高の自転車通勤者数を誇るこの街で、ポートランドっ子は二輪車を崇拝しています。最新の米国勢調査で、当地の労働人口の約10%が主な通勤手段として自転車を利用している、という結果が発表されました。  
ポートランドのドライバーは自転車利用者に対して非常にマナーが良く、また多くの企業では自転車用の駐輪スペースを確保しています。就業中に自転車を保管できる自転車専用ルームを完備している職場も多く見られます。
自転車専用レーンを増設したり、信号のある交差点に自転車利用者「専用」信号待ちエリアを設置するなど、ポートランドもまた市を挙げてドライバーとサイクリストが道を共有するための取り組みを行って来ました。ポートランドが自転車天国となった要因には、地形が平坦であることに加え、自転車専用道を完備した緑豊かな公園が多いことも挙げられます。都市は川の両岸に広がっていますが、街を二つに分断するウィラメット川には多くの橋が架かけられており、両側は良くつながっています。その橋のほとんどが自転車で渡れるため、交通の便は良好です。


Photo 6 ポートランドの交差点の自転車専用信号待ちエリア
Photo 7 自転車利用者のための駐輪場

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳者、編集者、教師

米国とイタリアに住んでおり、両国に深いルーツを持っています。広く世界を旅する中、日本で4ヶ月を過ごし、桜とたこ焼きに恋をしました。現在、世界中の友人からレシピを集め、料理の本を編集しています。

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