• 2016.10.11
  • 地元の食材
ポートランドの人口はおよそ60万人で、全米の他都市と比べると小さな都市だと言えます。ですがこの「バラの街」は目下、全米中で最も人気のある食の都のひとつとなっています。

ポートランドでは国際色豊かな料理が愛され、それを地元の新鮮な食材を使って料理することに対する強いこだわりがあり、それが人気の背景となっています。そのようなこだわりは「ファーム(農場)からフォークまで」というポートランドのモットーに表れています。

皮肉と極端な演出でありのままのポートランドを描く「ポートランディア(Portlandia)」という番組をご覧になったことがあれる人は、最初の回でカップルがレストランに行き、ウェイトレスにお店が出している鶏肉の質について質問するシーンを覚えているかもしれません。放し飼いで育った純粋種で、餌には大豆と木の実が与えられた鶏を使用していると、ウェイトレスは答えます。カップルがその鶏が生前幸せだったか訊くと、ウェイトレスはカップルがこれから食べようとしている鶏の名前と写真までもが載っている鶏の履歴書を見せて安心させようとします。

この番組で表現される皮肉にはそれなりの理由があります。広範で効率的な公共輸送システム、市街地を結ぶ自転車専用道路、そして自給自足プロジェクトを基盤とした食文化といったサステナブルな政策のかいがあって、ポートランドはこの10年間で全米一、環境意識の高い都市になりました。


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「ファームからフォークまで」が地元のモットー

ポートランドの人々は環境とサステナビリティ(持続可能性)の問題に強い関心を抱いています。現在ポートランドで進行中の最重要プロジェクトのひとつは、使われていない駐車場を野菜や果物を育てる地域菜園に変えていくというものです。都心にはこのような菜園が50か所以上あり、市民は自分の好きな野菜を育てることができます。市民は歩道沿いの小さな区画に個人で菜園を始めることも許可されています。この取り組みは市役所でも垣間見ることができ、市役所の正面にはトマト、イチゴ、レタス、キャベツを育てる小さな畑があります。街の法律は有機農法を用いることだけを義務づけています。

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ポートランドには地域菜園があちこちにある

ポートランド市外で果物や野菜の生産、畜産に従事する農場にも、化学製品の使用を禁止する法律が適用されています。こういった有機食品は、毎週土曜日に開催されるポートランド・ファーマーズ・マーケットに向けて出荷されます。このマーケットは全米最大規模の有機食品市場で、地産の食肉、乳製品、卵、はちみつ、ピクルス、ナッツ、パンといった多様な自然食品が販売されます。

6月から9月にかけての夏の期間中は、毎日20を越える青空市場が市内各地で開かれ、新鮮な有機食品を買ったり、その場で食べたりするのに理想的な場所となっています。

「ファームからフォークまで」というムーブメントがこの街で起きたのは、複数のファーマーズ・マーケットが積極的な広告や地域に根ざしたキャンペーン活動を展開し、有機食品と地産食材の消費を促進したのがきっかけでした。このような動きが「自分で作る食べ物」というコンセプトをベースにしたライフスタイルを確立し、ファストフードや冷凍食品を消費するアメリカの典型的で不健康な食習慣とは正反対の、健康的な食事という強い意識が形成されたのです。

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直売所では、新鮮な地元の農産物だけが売られている

市内には、「ファームからコーンまで」というコンセプトをかかげるとても有名なアイスクリーム屋もあります。ここではグリーン・オリーブ、バター、海塩などの地元の食材のみを使い、それらを胡椒やスモークしたキャラメルといったユニークな食材と組み合わせて作ったアイスクリームが売られています。このヘルシーで環境にやさしいアイスクリームは街の人々のお気に入りとなっています。

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地元の有機食材を使ったポートランドで人気のアイスクリーム

そして、多文化が息づくポートランドでは国際色豊かな料理を楽しむことができます。この街では新鮮な食材が好まれるため、輸入した食材と地元の味を融合して、新しい料理を生み出すという現象が起きています。ポートランドではメキシコのブリトー、コロンビアのアレパ、タイのパッタイ、インドカレー、ポーランドのピエロギなど、世界各地の多様な名物を簡単に味わうことができ、これらの料理は常に地元の農産物と外国産の食材を組み合わせて作られているのが特徴です。


特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳者、編集者、教師

米国とイタリアに住んでおり、両国に深いルーツを持っています。広く世界を旅する中、日本で4ヶ月を過ごし、桜とたこ焼きに恋をしました。現在、世界中の友人からレシピを集め、料理の本を編集しています。

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