ここは、手つかずの自然の中でカナダの野生動物たちが暮らしている、まさに野生の王国のような場所。オオカミやツキノワグマ、ヘラジカにオオツノジカ、ビーバー、バイソンなど、ありとあらゆる種類の生き物たちと、ここに行けば会えるというわけです。
湖や草原、谷間あり森林あり岩山あり、文字通り変化に富んだ風景を貫いて何本もの道が走るユニークな作りのパーク・オメガは、野生動物の写真を撮りたいアマチュアカメラマンや絶景マニアなら、特に必見です。
パーク・オメガに行った日は、私にとって、ここまでのカナダ生活の中でも最高の体験だったと言っていいでしょう。
シカやオオカミやクマと同じ空気を吸いながら森の中で眠った夜は、私にとって特別な思い出です。素晴らしい風景という点では我が愛しのスコットランドも負けてはいませんが、自然な生息環境の中で野生動物に接近できたことは、唯一無二の強烈な経験になりました。
大自然のど真ん中で一夜を過ごすのが希望ではありましたが、白状すると、キャビンに泊まるという選択肢の方がテントの何倍も魅力的だったので、その夜のねぐらはオメガが提供している素敵な宿泊施設の中から選ばせてもらいました。小さなキャビンから豪華なシャレーまで、好みと予算に応じて選べるのはありがたいですよね。
その夜は特別なものでした。友人たちと4人グループで焚火を囲み(パークのスタッフに頼めば安全に楽しめます)、蚊やクモを見つけたら追い払い、そんな一分一秒を心から楽しんでいると、これまでまったく縁がなかった新しい世界との出会いが、ここカナダでは私を待っているのだなと実感できました。
翌日の前半は徒歩で、後半は車でパーク内を見て回りました。最初に出会ったのは、キャビンのまわりをウロつくシカの大群。それから、オオカミやクマの餌やりの見学に出発しました。
パーク内を自分の車で回ることもできますが、あらかじめ許可された場所を除けば、当然ながら車を降りられる場所は限られています。
初っ端から餌を求めて車窓を覗き込んできたシカがいて(パークで売っているシカの餌用ニンジンは彼らの大好物)、これには我々も相当びっくりしました。窓を少しだけ開けてやると、シカはそのすきまから鼻先を突っ込もうとしてくるのです。
この珍妙でサプライズ的な出会いは、まだまだ序の口でした。続いて目撃したのはバッファロー、白オオカミや黒オオカミ、キツネ、ヘラジカ、クマ、鳥にコヨーテなどなど。ほとんどは間近で見ることができましたが、中でもシカとバッファローと鳥は牧草地を横切って、道路に向かって歩いてきました。それ以外の動物たちは保護区内に隔てられています。
車を降りずに回るツアーの所要時間は約50分。私たちは、午前中と昼食後に1回ずつ、計2回のツアーを楽しむという贅沢をしてしまいました。これの何が良かったかというと、雨が降ったあとの水たまりの水を求めて、1回目は見かけなかった動物たちが姿を現したことです。
パーク・オメガはさらに、二つの面白い文化的エリアを擁しています。一つはコロニゼーション(植民地化)のエリア。キャビン(山小屋)から古い農家、ティピー(先住民のテント)、果ては砂糖小屋に至るまで、この土地の先住民独特の様々な様式の建物が見られます。
同エリアには、オオカミやクマの食事タイムが見られる円形ステージもあります。そしてもう一つは、トーテム群のあるファースト・ネーション(北米先住民族)のエリア。ファースト・ネーションとはカナダの先住民族を指す言葉です。現在では差別用語とされている「インディアン」とか「ネイティブ」などの過去の呼称に代わるものとして、80年代から使われるようになりました。
一日かけて遊び倒すもよし、時間がなければ半日だけでも十分楽しめるのがこのパークのいいところ。とにもかくにも私が断言できるのは、パーク・オメガの良さは行けばわかる、機会があったら誰もが絶対に行くべき、ということです。パーク・オメガの公式ウェブサイトには、料金表からマップ、宿泊施設リスト、パーク内の画像まで情報が盛りだくさんなので、ぜひチェックしてみてください。