• 2018.09.12
  • カナダの主食、メープルシロップ
メープルシロップと聞けば、山積みのパンケーキが出てくるアメリカ式の朝食を思い浮かべるかもしれません。でも実を言うと、カエデの樹液を煮詰めて作るメープルシロップは、なんとカナダ生まれの天然の甘味料なのです。
カナダでメープル製品は主食と言ってもいいほどだし、カエデの葉のモチーフは国の象徴として国旗にも使われています。
カナダの国旗のデザインは、カナダの領土を広く覆うように分布するカエデの森と、その特徴的な葉っぱの形に着想を得ています。ケベック州の統治権の保護を目的とする団体のサン・ジャン・バティストソサエティ(Saint-Jean-Baptiste Society)が設立された1834年、同団体は公式シンボルとしてカエデの葉のバナーを採用しました。それ以降メープルリーフは、カナダという国家、カナダの自然の偉大さの象徴なのです。
マグネシウム、亜鉛、カルシウム、鉄、ビタミンBなどの必須微量栄養素が含まれるメープルシロップは、ただの天然甘味料ではなく、れっきとした完全食品。適量を摂るように心がければ、健康的な食生活が送れる栄養食なのです。メープルシロップには抗酸化物質が豊富に含まれている上に利尿作用があり、血糖指数も小さいため、カナダ人の食生活の中で特に重宝がられています。また、一般的な砂糖よりもカロリーが低いので、コーヒーや紅茶、ヨーグルト、牛乳やケーキなどの甘味料としても使われています。
ずっと昔からメープルシロップはカナダの文化の一部。ヨーロッパからの最初の移住者たちは、先住民から樹液の採集方法と、煮詰めてシロップにする方法を習いました。メープルシロップは北米大陸の東側で初めて作られた甘味料で、サトウキビの輸入が始まるまでは甘味料として最もよく使われていたのです。
アメリカ先住民の言い伝えによると、カエデの甘い樹液を最初に発見したのは、一人の賢いイロコイ族だったそう。私が調べたところでは、世界のメープルシロップ生産量の実に90%ほどが、ケベック州とオンタリオ州、ノバスコシア州を中心に、特定の品種のカエデが自生するカナダ東部で作られています。


カエデの樹液の採集は、メープルシロップ作りの第一段階です。
樹液の採集をするのは春の上旬ですが、「甘い季節」はとにかく短期戦。特定の気候条件のもとで樹皮の内圧に変化が生じ、カエデが蓄えた水分を流し始めたら、わずか2~3週間で収穫するのです。
ある国々のブドウの収穫期のように、メープル農家の人々も、樹液の採集作業は大好きな仲間と楽しみながら行います。家族でピクニックに出かけ、冷たい雪にあたたかいカエデの樹液を垂らし、練って丸めたtire(ティール、砂糖菓子の一種)を楽しむ姿が見られるのもこの季節です。
カエデの樹には、シロップ以外にもたくさんの副産物があります。たとえば、余った樹液に水を加えれば、キャンディーやビネガー(酢)に使う粒状のメープルシュガーになります。
フリッターやパンケーキにかけるのはもちろん、さまざまな風味満点の料理、肉のロースト、サーモン、そしてなんとカクテルにも使われるメープルシロップは、カナダの食卓にとって欠かせないもの。本物のカナディアン・メープルシロップは砂糖を加えない100%の自然食品です。米国でよく使われる甘いカラメル風シロップとは、その点が違うんですね。


精製と熟成の度合い、それらの結果生まれる色味によってシロップの正式名称が決まっており、ゴールデン(最も価値が高い)、アンバー、ダーク、ベリーダークの4つのタイプに分けられます。
動物由来成分を含まないメープルシロップはベジタリアンやビーガンにも向いています。またグルテンフリーなので、セリアック病を患っている人も口にすることができます。

特派員

  • パトリック・ サッコ
  • 職業エリオット・コンサルティング社エンジニア

こんにちは! 私はパトリックと言います。スコットランドのエジンバラ在住で、土木技師をしています。趣味は詩を書くことです。9年ほど前にイタリアからスコットランドへ移住し、この土地に惚れ込んでいます。雨の多い気候を好まない人もいますが、その気候のおかげでここは緑豊かな風景に恵まれています。暇を見つけては、車でエジンバラ郊外へ湖や渓谷を見に出かけています。

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