スイレン、サル、ヒツジと羊飼い、巨大な爬虫類や森に棲む幻想的な生き物などなど、園内には50体の天然の彫刻が展示されています。
草花や枝、色づいた葉などを素材として2次元絵画や3次元の像に仕上げた天然の傑作が集結しているパークの眺めは、さながら自然のモザイクと言えるでしょう。常緑樹の葉が大半ですが、中には多年生の葉を使ったものもあり、時間とともに葉が成長するに従ってアート作品の姿そのものがだんだん変わる様子も面白く、おとぎ話の本から飛び出してきたような景観に息吹を吹き込んでいます。
きちんと整備された歩道と香り高い花々、印象的な彫像に囲まれた夢のような園内はすべて、様々な植物に手を加えることで生まれた作品で構成されています。カナダのこの地域で最も魅力的なスポットに挙げられるこの公園は、ロンドンのキューガーデン、ベルリンのベルリン=ダーレム植物園に続く、世界で3番目に大きな植物園でもあるのです。
もともとは地元の修道士の発案によって1935年に開園。2万2000種類の植物、10室の展示用温室、樹木園、昆虫や蝶のいる昆虫館が、75ヘクタールの園内に点在しています。また、緑豊かな草地には異なる20のテーマを持った庭園があり、世界各地の植物の代表的な品種が育てられています。
さらに、非の打ちどころなく刈り込まれた緑一色のエリアでは、なんとバイキングから芸者、ピアノ、カメなどの像がお出迎えしてくれます。
2㎞以上の歩道沿いにこれらの傑作がモザイクのように散りばめられ、1年中目を楽しませてくれるというわけです。
また、世界的にもトップクラスのボタニカルアーティストを招待することによってガーデニングや園芸術の発展を奨励しており、それぞれの作家が生まれた国にインスピレーションを得た作品がたくさん並んでいます。
マザー・アースこと南米先住民族の偶像パチャママ、古代ギリシア神話のガイア像をモザイクのように美しく表現した作品
制作の難易度が最も高いものの1つはキツネザルの像。体が小さく、素早い動きをとらえるのが大変なのだとか。ゴリラの像は、ウガンダの豊かな生物多様性の象徴的な存在です。特に、この園の像のモデルになったマウンテンゴリラはヴィルンガ山地に固有の亜種で、今や700頭しか存在せず、絶滅の危機にさらされているのです。自然と環境の尊重はこのパークの主眼の一つなので、園内どこにいても植物の保護についてのニュースや、植物の種類と生息地に関する情報に触れることができます。
上海の代表作品のモデルは、徐秀娟(Xu Xiu Juan)という実在の中国人女性。昔の中国ではとりわけ貴重な存在とされていたツルを救うため、自らは沼地で溺死してしまったと言われる人物です。鳥の羽毛にも似た彼女の衣装を、色が異なる葉をあしらって表現しています。
パークが毎年行っているイベントには、モザイカルチャーズ・インターナショナルと呼ばれる園芸家と造園家のコンクールもあり、期間中は小規模の新作がずらりと集まります。授賞者はその賞を手にしたうえ、パーク内に自身の作品を一時展示または常設展示することができます。また、目の見えない人々のためのcourtyard of the senses(感覚の中庭)というスペースもあります。庭園の外側に通じる道は通行無料で、大半の庭園が閉鎖される冬期もクロスカントリースキーや子供のソリ遊びなどのスポーツのためのレーンは開放されています。かぐわしい香りの立ち込める緑豊かな温室は、一年中いつでも見学できます。
広大なこの植物公園を見学するなら、30分ほどですべての彫像が見て回れるトロリーバスを利用するのがおススメです。