カナダの首都オタワ市は、カナダにおける二か国語の常用(バイリンガリズム)を推し進めるためにもっとも熱心に取り組んでいる町で、住民の大半がバイリンガルです。
このカナダの首都で暮らしてみて、オタワは、英語を話す人とフランス語を話す人が幸せに共生しているバイリンガル都市であることがよくわかりました。多くの人がどちらの言葉も流暢に話し、相手によって自在にひとつの言語からもうひとつの言語に切り替えることができます。同じ会話の中でフランス語から英語に切り替えたりするのも、オタワの人々にとってはごくありふれたことです。 でも全般的に見ると、カナダへ来る予定があるなら、英語が必要になるでしょう。
英仏どちらの言葉も話せる人の割合は、全人口と比較するとかなり低いのが現状です。ケベック州のフランス語話者の35%が英語も話せるのに対して、ケベック州以外の英語話者でフランス語も話せる人の割合は7%に過ぎません。
アメリカでは国民の10%が二つの言葉を話しますし、いうまでもなく欧州共同体では、カナダ学会の最近の研究によると住民の60%が母語以外の言葉で会話ができ、3分の1は第三言語もマスターしています。
英仏二言語が公用語になったのは、バイリンガリズムの支持者で、フランス語圏のケベックを連邦に留めておくことを望んでいた元首相ピエール・トルドーの功績が大きいと言われていますが、実際にはバイリンガリズムは連邦政府によって築き上げられたのです。
カナダの人々がバイリンガリズムに対して相反する態度を取るのももっともだと思える込み入った理由は色々とありますが、そのうちのひとつは世界経済においてアジアの重要性が増してきていることで、とりわけカナダ西部ではその傾向が強くみられます。ブリテッシュコロンビア州とアルバータ州では、人口の3分の1が、第二言語としてフランス語を学ぶより、スペイン語や中国語の普通話を学んだ方がビジネス上のチャンスが増えると考えています。
さらにカナダのバイリンガリズムのむずかしさは、連邦の法律とも関係があります。
第二言語の学習は、世界的な競争力を高めることに大きく貢献するものとして、また文化的な対立を乗り越えるための第一歩として受け入れられるべきですが、学校で両方の言語を教えようという試みはわずかしかなされていません。
たいていのカナダ人は第二言語の一般的知識を教わりますが、多くの人はやがてそれを使う機会を失ってしまうのです。フランス語を話す機会を増やし、話せるようになりたいと思えるようなきっかけ作りをすれば、この現状は変わっていくかもしれません。
現実に、バイリンガルの働き手はより高い報酬を受けています。とりわけケベック州や公共機関では、バイリンガルの働き手が必要とされ、求められています。 英仏二言語(もちろんスペイン語と中国語普通話も)を話せることは、誇りとすべきこと、そして個人的にも将来有利な条件をもたらす投資として捉えられるべきです。
バイリンガルの家庭に生まれたカナダ人は、それを不幸なことではなく恵まれたことととらえ、カナダ人はみんな、世界でもっとも重要な二つの言語が話されている国に生まれたことを誇りに思うべきなのです。
実をいうと、移民と文化的多様性についてこれほどオープンな国で(そのことについては以前にブログでいろいろと書きましたが)、バイリンガリズムがいまだに現実からほど遠いというのは、ちょっと妙な話です。政府関係のサービスでも標識でも法律でも、二つ(場合によってはそれ以上)の言語が使われているというのに。