ブドウ栽培にとって冬の厳しい寒さを和らげてくれる湖はとても重要な存在ですが、その一方、この過酷な気温がなければアイスワインと呼ばれる高品質なワインを生産することはできません。
アイスワインは恐らく世界一、常識外れなワインです。このワインについて考えれば考えるほど、ますます常識外れなものに思えてきます。天候に振り回され、あらゆる大気の影響を受け、冬には氷の餌食となって文字どおり凍りついてしまう、そんなブドウ畑をちょっと想像してみてください。凍ったブドウはその後収穫され、非常に特殊な技術によって圧搾されて、最高の糖度と濃度の果汁のみが抽出されます。
アイスワインの生産方法はほとんどありえないほど厳格です。まず、最適な気候条件の土地でブドウを育てなければなりませんが、これは暑すぎても寒すぎても、早すぎても遅すぎてもいけません。
アイスワインの原料は収穫期の遅いブドウ(収穫期が12月~1月後半)で、夜の霜で凍ったもの(たいてい夜に収穫)を、収穫後、圧搾してまた凍らせます。この特別な方法によって、高度に濃縮された果汁と香りを果実から抽出できるのですが、実は氷には果実に含まれる水分を吸収するとともに、ブドウ自体を守る働きもあります。
極上のワインはリースリングまたはゲヴュルツトラミネールというブドウ品種を使用したもので、前者からはスイートワインでありながらミネラル感のあるワインが、後者からは非常に香り高いワインが作られ、どちらも地元で売られるだけでなく輸出もされています。
私は幸運にも地元のワイナリーの試飲会に参加し、ブドウの収穫や特徴についてオーナー自身から説明を受けたことがありますが、私がイタリア人ということを知ってワイン通だと思い込んでいたようです。
私はワイン通ではありませんが、アイスワインが素晴らしいこと、そしてカナダがイタリアをうらやむ必要など全くないことは断言できます。もちろん、両者のワインの品種はまるっきり異なるものですけどね。
オンタリオ州は凍ったブドウを圧搾して作るこのワインで世界的に高く評価され、カナダのワイン生産者はついにヨーロッパ市場への参入を認められました。
皮肉なことに、アイスワインの歴史はヨーロッパ、正確にはドイツが発祥の地で、ドイツの生産者が約2世紀前に発明し、生産を開始しています。
にもかかわらず、カナダのアイスワインは正式にアイスワインと名乗る権利を取得し、ドイツとオーストリアで既に生産されていたアイスヴァイン(アイスワインのドイツ語表記)の公式なライバルとして頭角を表したのです。
かつて、カナダのデザートワインは少なくともマイナス8℃の環境で生産されていましたが、糖度の基準が欧州連合の設定基準を完全には満たせず、ヨーロッパ市場に出回ることはありませんでした。しかし、状況は変わりました。
ブドウはよく凍らせるほどワインの質は高まり、甘みが増します。ブドウは80%が水分ですが、果肉がまるで大理石のように固く凍ったところで圧搾すると、糖と酸が最大限に濃縮された果汁を抽出することができます。アイスワイン生産者にとってのリスクは、鳥や不利な気象条件によってダメージをこうむる可能性のある9月から11月の間、木になっているブドウをそのまま放置しておかなければならないことです。
実際にはこれでもまだ不十分で、ブドウが凍りつくまで放置することになります。しかも、剪定から収穫、さらには圧搾からボトル詰めまで、すべての作業を常に氷点下で行う必要があります。とても長く、骨の折れる作業ですが、競争の激化する市場で注目を集めるには極上のユニークな製品を提供するしかないのです。