『ジングルベル ジングルベル
鈴が鳴る
なんて楽しい
ソリの遊び、オー』
ここカナダには1頭立ての馬ソリもあるはずですが、クリスマスシーズンの本格的なアドベンチャーと言えば犬ゾリです。
カナダにはフランス軍とイギリス国王軍が新世界の争奪戦を繰り広げた歴史的な場所があります。
現在、こうした土地のほとんどは森に覆われていますが、この人里離れたカナダの荒野では冬になると銀世界(夏は草原)を犬ゾリで駆け抜けることができます。
ソリ犬専用のキャンプ場がいくつかあり、そこではよく訓練された何十匹もの犬が犬舎につながれています。のどいっぱいに息を吸い込んで声を限りに吠えたて、体中を駆けめぐるアドレナリンを誇示しています。
コンディションも見るからに素晴らしい様子で、お客さんを乗せてソリを引きたくてうずうずしています。雪が大好きのようですね!
私がこのアウトドアアドベンチャーをするためにやってきたときには、ソリの準備が整っていました。
1台目のソリの乗客は、凍った雪の上を何度か横滑りした後、最初の角でソリから投げ出され、犬たちは乗客を残しあっという間に姿を消してしまいました。
私たちは2人のガイドにソリへ案内され、扱い方を教わりました。自力で走らせることになっているので自分たちで犬をコントロールしなければいけないのです。「ブレーキ」のかけ方を習い、一番大事なのは犬の安全だとアドバイスされました。「じゃあ私たちの安全はどうなの?」と考える暇などありませんでした。
犬たちは従順で、森の奥深くに案内してくれるガイドのソリの後をしっかりついて行きました。
雪の上をソリが滑る音と雪の中に沈む犬の足が雪を踏みつける音が耳いっぱいに広がります。
ここカナダで、深い森の中にいることを意識すると、なじみのある世界の境界から旅立つ決意をした探検家のような気分になります。
カナダは境界地帯です。それは無限の世界との境界を意味し、森を抜けて谷の反対側まで行くと、その無限はある時点で私たちの目の前に現れます。
ここで言う無限には名前が付いていて、バックランドと呼ばれています。
完全に手つかずの無限の世界で、人間は冒険するのが精いっぱいで、定住はまったく不可能です。ここに広がる大自然は過酷で、避難する場所もありません。
この辺りは先史時代の巨大隕石の影響によってできた土地で、起伏のある山が目の届かない遥かかなたまで続いています。森の木は空が隠れてしまうほど高いわけでも、うっそうと茂っているわけでもありません。
ここの冬は終わりがないように思えますが、実態を一番よく知っているのは木々でしょう。雪に覆われた姿は枝に冬の重荷を背負っているかのようです。
何百キロにもわたるまったく汚染されていない自然を思い浮かべるのは、考えるだけでも怖くなるかも知れませんが、正直なところ、辺り一面、真っ白の雪に囲まれるのは、心がとても落ち着き、穏やかな気持ちになります。特にクリスマスシーズンは家族や友達との日帰りレジャーにぴったりです。何はともあれアドベンチャーを満喫できますからね!
空気の冷たさには驚くかも知れませんが、私の場合、遥か遠い無限の世界へ目を向けたり、未知のものや、青い空、緑の木々、白い雪のかなたのいろんなものに想いをはせたりして、そんなことはまったく気になりませんでした。