• 2022.05.23
  • ふたつの食文化の完璧な融合「テクス・メクス(Tex-Mex)」
テキサスの州都であるオースティンはメキシコとの国境にもほど近く、「テクス・メクス(Tex-Mex)」と呼ばれるメキシコ風アメリカ料理がこの地域の名物料理です。
アメリカの南西部に位置するテキサスで誕生したテクス・メクス料理は、今やカリフォルニアやネバダ、ユタ、そしてニューメキシコやアリゾナでも人気を博しています。
こちらオースティンには、お持ち帰り用にタコスを販売している小さなフードトラックから素敵なメキシカン・フュージョンレストランまで、街の至る所にテクス・メクス料理のお店があります。
テクス・メクスは、ふたつの異なる食文化のスタイルや食材を混ぜ合わせることで、斬新でとても美味しい料理を生み出すことができる、ということを証明しています。
メキシコとテキサスは地理的に隣接しているので、人々は植民地化以前から自然と伝統的な食文化を共有していました。例えば、唐辛子を使った辛味の強い味付けはアメリカ先住民や、いわゆる「先コロンブス期」(コロンブスがアメリカ大陸に到着する以前)の文明において大いに重宝されていました。
スペイン人をはじめとするヨーロッパ人の到来が人々の生活習慣に影響を与え、言語や宗教が強制的に広められましたが、同時に大陸の外からタマネギや鶏肉などの新しい食材が持ち込まれました。
こういった文化のるつぼのような状況の中で、スペインの新大陸植民地に暮らす民族は各文化の極意となるような部分を分かち合い、政治的なつながりよりもはるかに強い絆を育みました。メキシコは1821年にスペインから独立しますが、その後20年の間、テキサスはメキシコの一部のままでした。
味や創作性、色合い、香りや栄養価の高さ、といった料理のバリエーションの豊富さだけでなく、この料理が持つ社会的・歴史的重要性もテクス・メクスの魅力なのです。
マヤ文明やインカ、アステカ帝国の時代から数千年に亘って連綿と続く食文化をたどるメキシコ料理は、人々の物語を伝える存在でもあります。
テキサス料理にはこれといった独自のスタイルはありませんが、炭火で焼いた肉、ソース、地元産野菜のグリルなどがルーツになっています。
このふたつの食文化が融合した結果、地元食材にエキゾチックな風味を加えた、地域色と国際色を合わせ持ったテクス・メクス料理が誕生したのです。
なかには世界中で愛されるようになった料理もあります。食に詳しくない人にはメキシコ料理だと思われていますが、実はテキサスで生まれて発展したものもあり、その最たる例がブリトーです!
肉やチーズなどの具材をトルティーヤ(トウモロコシ粉で作った薄焼きパン)に包んだブリトーは誰もが知る存在です。メキシコ料理だと思っている人が多いようですが、実際はメキシコ国内では北の端のエリア、厳密に言えばアメリカとの国境付近でのみ食べられているメニューで、メキシコの中心部で見かけることはありませんし、テクス・メクス流に黄色いご飯とスパイスを添えて出されることもありません。
テクス・メクス料理の主要食材は米、トウモロコシ、アボカド、そして豆類の4つで、代表料理にはファヒータ、スパイスのきいたフライドチキン、ナチョス、エンチラーダ、タコスなどがあります。
エンチラーダは、ブリトーよりも一回り小さいトルティーヤに具材を挟み、上にソースをかけたもので、ブリトーとイタリアのベイクド・パスタを合体させたような一品です。トルティーヤの中には肉類、チーズ、豆や野菜などが入っていますが、エンチラーダの特徴と言えば、なんといってもトルティーヤの上にかけられたとろみのあるチリソースでしょう。このソースは、鶏の出汁と小麦粉、そして燻した唐辛子で作ります。
タコスはテクス・メクスを代表する一品です。こちらもトルティーヤを使った料理ですが、違いは皮の形にあります。上側が開いた形になっていて、そこから具材を入れます。硬い皮を使ったハードシェルタコスと、柔らかい皮のソフトシェルタコスの2種類があります。
現在では、タコスは最も広く普及し、各地でアレンジが加えられているテクス・メクス料理です。タコスの具材は何でもOKですが、テクス・メクスの本場である国境エリアでは、肉や豆、トマトを入れてたっぷりソースをかけるのが定番です。
テクス・メクス料理には、サワークリームやピコ・デ・ガヨ(刻んだトマト、タマネギ、コリアンダーで作るサルサソース)、ワカモレ(アボカドのソース)、リフライド・ビーンズ(うずら豆の炒め煮)を添えるのが一般的です。
ナチョスはとてもボリュームのある料理ですが、テキサスではおやつ的な扱いです! トウモロコシの粉で作った三角形のトルティーヤチップスにハラペーニョ、オリーブ、トマト、サワークリーム、アボカドを乗せて、その上に熱々のチェダーチーズをたっぷりかける、というなんともハイカロリーな一品ですが、前菜として出てくることもあるし、映画館のフードメニューでも見かけます。


写真:左はチキン・ファヒータ。右の皿は、ライスにリフライド・ビーンズ、ピコ・デ・ガヨ、ワカモレ、トルティーヤを添えたもの

特派員

  • パトリック・ サッコ
  • 年齢酉年(とり)
  • 性別
  • 職業エリオット・コンサルティング社エンジニア

こんにちは! 私はパトリックと言います。イタリアからスコットランドへ移住し、2022年4月にアメリカのテキサス州オースティンに引っ越してきました。
仕事は土木技師、趣味は詩を書くことです。時間のあるときはドライブをして新しい場所を発見するのが好きです。
アウトドアが大好きで、キャンプやハイキングにもよく行きます。
この新たな土地でたくさんの友達をつくって、みなさんにもこの街のことを知ってもらえればと思います。

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