• 2022.11.02
  • ゴミの大聖堂
だれもが皆不用品を廃棄するわけではなく、なかにはガラクタを捨てられずにため込んで、ガレージや家の中に積み上げている人もいます。その一人であるオースティンに暮らすヴィンス・ハンネマン氏は、ガラクタをバックヤードアートの傑作へと変身させました。
彼が手掛けた「ゴミの大聖堂(The Cathedral of Junk)」は壊れた機械や金属スクラップ、その他様々な廃材で作られた建物で、サウス・オースティンの人気観光スポットになっています。
この作品は間違いなく、オースティンを唯一無二の街にする存在でしょう。
そうです、思い出してください。オースティンのモットーは「Keep Austin Weird(オースティンはユニークな街であり続けよう)」でしたね!
英語の「weird」は「正気ではない」や「珍妙な」という意味ではなく、「どんな時もユニークであり続けよう」という意志、つまり「個性あふれる自分自身の表現方法」を表す言葉です。
ハンネマン氏は自身の作品で「唯一無二の自分」を表現しているのです。
彼がささやかに「ゴミの大聖堂」の制作を開始したのは1980年代後半のことでした。不用品を集めて何かを作ることが好きだった彼は、最初はいろんな廃材を集めて建築物を作ることから始めたのですが、それが今では多層階・多室構造の建物になっていったのです。制作開始から数年して彼の趣味と作品が知られるようになると、人々は作品の一部に使ってもらおうと不用品を彼に送るようになりました。
ゴミの大聖堂はサウス・オースティン地区にあるハンネマン氏の自宅の中庭にあります。道路からは部分的にしか見えませんが、数年経ってゴミが溜まってくると近所の住人たちから苦情が出始めました。安全性が疑われて市の職員が検査に訪れましたが、彼の大聖堂は毎回「構造的に問題ない」と判断され、今日まで存在しています。一般公開や見学も問題ありません。
推定50トンの廃棄物でできたこの作品を見ると、訪れる人は驚嘆します。ゴミの大聖堂はただ単にガラクタを積み重ねたものではなく、ハンネマン氏の手による見事な階段やアーチ状の天井、さらにはいくつかの展望デッキまで備え付けられています。古びたテレビや自転車、道具類、ビン、交通標識に自動車の部品、はしご、その他様々な長期間放置されていたもので作られたこの大聖堂は、まさに驚異のモダンアート作品です。
時間の経過とともに草木が生い茂って大聖堂に絡みつき、その姿はまるで生きた作品のようでもあり、またこの物質主義の世界で廃棄される大量生産品にオマージュを捧げた作品のようでもあります。
ゴミの大聖堂が生きたアート作品と言えるもう一つの理由は、現在も作業が進行中で作者が作品にどんどん不用品を加えているので、時間とともにその姿を変えているからです。
ゴミの大聖堂を一目見ようと、今では大勢の人が訪れます。なんと、この中庭を借りて結婚式やパーティーを開催することも可能なんですよ。
私有地に設置されているので、見学にはハイネマン氏への連絡が必要です。ゴミの大聖堂について書かれたブログやレビューを読むと、訪問可能な時間帯はすぐに予約でいっぱいになるので、数日前には電話で連絡しておくのがお勧め、とのことです。
この大聖堂への訪問は人生で一度きりの経験です。敷地内はゴミであふれかえっているので遵守すべきルールがありますが、ここも一種の美術館なのでルールは尊重しないといけませんね。
ゴミの大聖堂はサウス・オースティンのアイコン的存在となっていて、オースティンの人ならだれもが、この場所に敬意を払ってちゃんと予約をしてから訪問することを推奨するでしょう。
この作品はまさにリサイクル(リユースと言った方が良いかもしれません)の象徴です。日々の暮らしを続けていると不要になるものがたくさん出てきて、それらが積み重なって「生活を圧迫する」ことを暗示しています。
個人的には、ゴミの大聖堂は取っ散らかった消費社会をディストピア的に表現した作品だと捉えています。人それぞれに異なるメッセージを受け取り、違った解釈ができるというのも、アートの良いところではないでしょうか?

特派員

  • パトリック・ サッコ
  • 職業エリオット・コンサルティング社エンジニア

こんにちは! 私はパトリックと言います。イタリアからスコットランドへ移住し、2022年4月にアメリカのテキサス州オースティンに引っ越してきました。
仕事は土木技師、趣味は詩を書くことです。時間のあるときはドライブをして新しい場所を発見するのが好きです。
アウトドアが大好きで、キャンプやハイキングにもよく行きます。
この新たな土地でたくさんの友達をつくって、みなさんにもこの街のことを知ってもらえればと思います。

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