• 2023.05.09
  • 互いに分かちあうコミュニティー
北米の国々、つまりカナダやアメリカは、コミュニティー意識が非常に強いのが特徴です。いわゆる「分かちあいは思いやり(Sharing is Caring)」の精神は学校でも教えられていますし、近所の人にどのように接するか、地域をより良くするために自分は何ができるのかを知ることにも深く関係しています。

なかでも私のお気に入りのコミュニティー活動は、オースティンだけでなくアメリカ各州で広く行われている本の交換プログラムです。アメリカ全土の公園や住宅地のあちこちに、子ども向けや大人向けの古本がぎっしりつまったカラフルな小さい本の家が設置されています。これらは「1冊取ったら1冊寄付する(Leave a book, take a book)」、すなわち無料で本を集めてみんなで分かちあおうという「マイクロ・ライブラリー」と呼ばれる地域事業で、今では全国に広がっています。ご想像いただけるかと思いますが、この活動には多大な労力も面倒な調整も必要ありません。コミュニティー全体に向けて完全に無料で提供されているこのサービスは、純粋にボランティアで行われている、本好きには非常にありがたい存在です。

マイクロ・ライブラリーは、本や美しい物語で地域に住む人々を包み込む「図書館」として広く普及しています。自宅にある本を持って行って別の本と交換したり、この事業のことを他の人に説明したりすることで、誰もが貢献できるという点が最高に素晴らしいですね。本を入れるための小さな図書館の簡単な作り方の紹介や、D.I.Y.が苦手な人向けに既製品(価格は約100~600ドル)の販売を行う関連サイトもあります。数百、もしかするとそれ以上の小さな無料の書店が全米中のあちらこちらにあるのです。


この活動は、アメリカ全土で人気を博している「文学カフェ」の考えを継承したもの。人々が最新の本について論じたり、他の参加者にお勧めの本を紹介したりすることができる文学カフェは、読書クラブや本のシェアリング、すなわち決められた場所で本を交換する新しいスタイルを生み出しました。そして、「1冊取ったら1冊寄付する」マイクロ・ライブラリーも、この流れを汲んでいます。

自分が暮らす街でマイクロ・ライブラリーを見かけるのはとてもうれしいものです。近くにベンチがある場合は、少しの時間だけ本を借りて、読み終わったら返却することもできます。これは私が実際に経験したことですが、ある時面白そうな本を見つけたものの、あいにく手持ちの本がなかったので翌日古本を持参してもう一度行ってみることにしました。ところが、お目当ての本はもうなくなっていたのです。そこで、次回からは車に何冊か本を乗せておいて面白い本に出合ったらすぐに交換できるようにしています。また、私が借りた家には児童書が何冊か残されていたのですが、私には子どもがいないので、新しい人に読んでもらえることを願って近所のマイクロ・ライブラリーに寄付することにしました。

もうひとつ、常々感心しているのですが、不用になった物を捨てずに玄関先に置いておく、という素晴らしい習慣があります。要らなくなった置物や家具などを家の外に出しておくと、欲しい人が自由に持ち帰って使えるというシステムです。不用品の寄付を募り、集まった物を売って様々なチャリティーの資金に充てる団体は数多く存在しますが、「販売に適さない」と判断された品物が数多く捨てられているのも事実。なので、不用になった物を近所の住人や通りがかった人が持ち帰れるのはとても良い方法だと思います。道端や、特に十字路などの交差点付近ではこうした不用品を見かけることが少なくありません。

サイトやSNSでお知らせする人もいますし、Facebookには「Buy Nothing(何も買わないで)」や「Free Stuff(無料)」を始めとするこの活動に特化したグループも複数存在します。住所や交差点の名前が掲載されていることもあるので、欲しい人は誰でも現地に行って回収できる、というわけです。早い者勝ちなので、通常は一瞬にして誰かが持って行きます! アメリカでは引越しをする人が多く、家具などの荷物を持って行けない人もたくさんいるため、ほとんどの場合とてもきれいな品々が出されているので、当然ですね。

特派員

  • パトリック・ サッコ
  • 職業エリオット・コンサルティング社エンジニア

こんにちは! 私はパトリックと言います。イタリアからスコットランドへ移住し、2022年4月にアメリカのテキサス州オースティンに引っ越してきました。
仕事は土木技師、趣味は詩を書くことです。時間のあるときはドライブをして新しい場所を発見するのが好きです。
アウトドアが大好きで、キャンプやハイキングにもよく行きます。
この新たな土地でたくさんの友達をつくって、みなさんにもこの街のことを知ってもらえればと思います。

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