サロンイベントレポート

木曜サロンレポート

テーマ:
“雪・氷・雨” 自然の脅威との共生 -データ活用の可能性を探る-

開催日: 2019年9月12日

○活動の主旨、目的○
建築物や車、電車、飛行機などの交通インフラ、水道や電線などの生活インフラのように雪や氷の脅威にさらされるものは数多く存在します。

雪・氷・雨に関する研究は、防災や製品開発のみならず、今後はデータの有効活用も期待できると考えられています。

雪や氷がどのように物質に付着し、その物質にどのような影響を与えるのか、またそれらの降り方などの気象観測やデータ処理などについて、さらに従来の雨量計を進化させ、より正確な雨量や雨の降る方向まで把握することのできる3次元雨量計(JR東日本と共同開発)についてなど、雪・氷・雨のスペシャリストである松田氏にお話を伺いました。

その他、松田氏が取り組む「将来世代のための山道創り」「快適性を追求した近自然の”放射の家”」「老人、外国人旅行者、障碍者に優しいサイン計画」についてもお話いただきました。

ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール

松田 益義 氏
株式会社MTS雪氷研究所 代表

神奈川県生まれ。高校時代は山岳部、大学では探検部に所属。
北大理学部で地質学を学び、その後北大低温科学研究所、メルボルン大学、オーストラリア科学省南極局氷河部門、(株)自然環境科学研究所を経て1985年に(株)MTS雪氷研究所を創設。
以来、気象と雪氷のコンサルタントとして気象防災等に係る。
(公社)日本技術士会理事、同応用理学部門副部会長、(公社)日本雪氷学会副会長等を歴任。(公社)極地研究振興会評議員。

ナレッジドナーインタビュー

  • 本日お話しいただいた「放射の家」のシステムについて教えてください。
  • 私が創った「放射の家」は2種類あります。いずれも太陽放射を熱源に、地球放射を冷源に利用して室内の温度管理を行うシステムです。太陽放射は主に冬季の日中の床の温度上昇に、地球放射は主に夏季の夜間の床の温度降下に有効利用します。後者は放射冷却として知られる自然現象の室内利用です。床を通じて室内温度を調整するという意味では床暖房/床冷房のシステムの一種とも言えます。
    一つ目のシステムは都市の建物を想定して開発したものです。都市部では窓の向こうは隣家の壁であったりしますが、屋根の上には天空が広がっています。そこで、この屋根に大きな天窓を取り付け、その全面に反射率と断熱性が高いルーバーを設置します。このルーバーの傾斜角は室内に温度センサーを取り付けて自動制御します。
    二つ目は、郊外や別荘地など周囲に豊かな自然が広がっている地域を想定し、外部空間と室内空間の一体化を大事にしたシステムです。 建物の北側を除く特に南側の側壁を大きく開放してガラス窓にし、そこにブラインド又はスクリーンを設置して太陽放射と地球放射の量を制御するものです。
    両システムともに、太陽放射と地球放射は床(および壁面)を暖めまたは冷やし。その熱(温熱と冷熱)が室内空気に伝達される仕組みです。壁、天井、ガラス面の高断熱性の確保と室内空気の循環が大切であることは言うまでもありません。 これだけで1年(365日×24時間)の大半の時間帯をエアコン稼動なしで快適に過ごすことができます。野外の自然界では太陽エネルギーの多くは地面を暖めることに使われ、暖められた地面の熱が大気に伝達します。夜間は逆に地表面から放射エネルギーが放出することで地表が冷却し、その冷熱で大気が冷やされます。一方、エアコンは自然界(野外空間)とは異なり室内空気を強制的に昇温/冷却し、その温熱/冷熱が床や壁面に伝達するという自然界にはない、つまり不自然な熱伝達の経路を採ってます。不自然を自然に変換することで不快な壁面の結露は消滅します。この熱伝達の経路変更によって生じる室内空間の快適さは経験しないとわかりません。
    前者のシステムを八ヶ岳の別荘で、後者のシステムを東京都内の自宅で実現しました。よろしければ見に来てください。
  • このシステムはどんな地域でも対応可能ですか?例えば、熱帯の国ではいかがでしょうか?
  • 日本などの中緯度の地域では夏と冬で気温が大きく異なり冷房と暖房が必要になります。一方、低緯度の熱帯地域では一年中気温は大きく変わらないので冷房だけ、高緯度地域では暖房だけが必要です。「放射の家」のシステムは、本質的には相当広い範囲の気候帯に対応できると思いますが、中緯度地域に最も適しているように思います。

※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。

木曜サロンとは

幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。

ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

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