サロンイベントレポート

木曜サロンレポート

テーマ:
今後の国際情勢を見抜く“目”を養う4つのポイント -米中関係を事例に-

開催日: 2020年9月3日

○活動の主旨、目的○
第二次世界大戦の終結以降、70年余にわたって大戦争が再発していない状態が続いているという意味において、現行の国際秩序は安定的であると言えます。これは偶然ではなく、中世ヨーロッパの平和構想を皮切りに思想家や政治指導者がよりよい国際秩序の構築に専念してきた成果と言えます。
その努力の過程は鈴木氏をはじめ多くの研究者に継がれていき、今もなお、国際平和への理想と現実の交錯点のあくなき探求が続けられています。
このような過去の世界情勢の流れを把握した上で、現在、国際安定を害する米中対立の深層、日本を含めたアジアへの波紋、大統領選挙を11月に控えたアメリカでのポピュリズム政治の影響、各地に不安定な問題を抱える現在の世界情勢を理解し、今後の情勢を見極める目を手に入れるための4つのポイントについて、また鈴木氏が考える今後の世界情勢の予測と、今後の日本の友好国と考えられる国についてお話いただきました。

ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール

鈴木 基史 氏
京都大学大学院法学研究科教授

京都大学大学院法学研究科教授。専門は、国際関係論・国際政治経済学。数理的手法も用いながら、国際紛争・協調の実証的分析を行う。他に選挙研究なども手がけている。
法政大学経済学部卒業。サウスカロライナ大学より博士号取得。ノーステキサス大学助教授、関西学院大学総合政策学部助教授・教授を経て、2002年より京都大学大学院法学研究科教授。

ナレッジドナーインタビュー

  • アメリカと中国が対立する状況下で、日本はどのような立場を取っていくべきかご意見をお聞かせください。
  • 日本は、主に二つの理由から、アメリカのように対中強硬政策を実施することができません。
    一つは中国との経済関係です。中国は日本にとって最大の貿易相手国です。過去20年間で日本企業は中国に1000億ドル以上の投資をしており、国内投資に匹敵する程度に中国への投資の方が多いとまで言われています。日本は長らく経済的な不振が続き、少子高齢化などの社会問題が深刻化する中で、中国との経済関係なしには今後の日本の経済的成長は考えられません。
    もう一つは、中国との地理的距離が非常に近いということです。もし争いが起きた場合、日本に及ぶ被害は甚大です。中国との間には領土問題を抱えており、紛争の勃発は何としても避けなければなりません。 現在、アメリカは友好国のオーストラリア、ニュージーランド、インドと連携して対中包囲網を築いていく戦略を明らかにしていますが、以上の二つの理由から日本はまだ立場を明確にしていません。もし今後、日本が米中どちらにつくか決断を迫られた場合、経済関係を重視しつつ、紛争の勃発を抑制しながら対米関係やオーストラリアなどとの関係をどのように維持していくのか、日本は慎重に対処していかなければならないと思います。
  • 国際情勢を正しく理解する上で必要な能力や知識、心がけることは何かありますでしょうか。
  • 私の見解を申し上げますと、国際情勢を知る上で、国際的に大きな影響力を持つアメリカ政治を理解することは重要です。日本人は日本のメディアを通してトランプ大統領は史上最悪の大統領だという印象を持っていますが、アメリカ国内の報道からは違った状況が見えてきます。11月の大統領選挙に向けて、バイデン候補は少し前までは10ポイント程リードしていましたが、9月に入ってからトランプ大統領の支持率は増加しており、トランプ大統領が発する様々なメッセージが多くの有権者に好意的に受け止められていると判断せざるを得ない状況です。
    アメリカで報じられている様々なニュースを見ない限り、真のアメリカ政治を知ることはできません。日本の報道だけに頼らず、インターネットなどを利用して現地の報道から多角的に情報を収集することが不可欠です。

※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。

木曜サロンとは

幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。

ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

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