サロンイベントレポート

木曜サロンレポート

テーマ:
身近な再生医療の発展に向けた新規関連事業の開拓と異分野連携

開催日: 2020年9月17日

○活動の主旨、目的○
これまで、整形外科疾患やスポーツ傷害なども含めた様々な疾患において、内科的治療や保存的治療の効果がなかった場合、すぐに外科的治療としての手術という選択肢しか残されていませんでした。しかし、近年の幹細胞研究(再生医学)の進歩はめざましく、幹細胞や生体材料などの臨床応用に大きな期待が寄せられ、医療現場では次々と新しい治療法が検討・検証されつつあります。それらの治療法は外科的治療の前段階の新たな選択肢となる“再生医療”として注目を集めています。

今回はそんな再生医療の取り組みについて、各大学や医療機関と共同で最先端研究をしながら、プロバスケットリーグ“大阪エベッサ”のチームドクターとしても活躍されている傍島氏にお話を伺いました。
今後、再生医療がより多くの人に提供されるために、医療のみならず様々な分野との連携が必要とされています。100歳まで健康不安なく人生を楽しめる社会を実現すべく、野心的な目標に基づくムーンショット型の戦略的研究開発なども含め、木曜サロンに参加される各分野のトップランナーの皆さんと共に、今後の再生医療の未来を考えました。

ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール

傍島 聰 氏
医療法人再生会そばじまクリニック 理事長

1992年大阪医科大学卒業後、整形外科医として研鑽を積み、2002年に米国ピッツバーグ大学に留学、幹細胞研究に従事。2011年クリニック開業後、患者自身の細胞や組織を使った新しい治療を展開、“身近な再生医療”の発展を目指す。また、各大学や医療機関と共同で再生医療の基礎研究も行う。再生医療学会理事・認定医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本リハビリテーション医学会臨床認定医。

ナレッジドナーインタビュー

  • 現在スポーツ障害などの疾患に対して幹細胞を用いた治療法が取り入れられ始めているということですが、将来スポーツのパフォーマンスを上げるために遺伝子組み換え幹細胞を使うことは可能でしょうか。
  • 何年、或いは何十年か後には、遺伝子組み換え幹細胞を使ってスポーツのパフォーマンスを向上させることも可能になるのではないかと思いますが、やはり法的な規制が大きな障壁となるでしょう。受精卵のES細胞や、遺伝子を導入して新たに作り出したiPS細胞は規制のハードルが高く、様々な課題があるため臨床応用は難しい状況です。パフォーマンス向上のための遺伝子組み換えは、細胞を大きく変えてしまいますので、基礎研究を重ね、安全性をしっかりと確認し、段階を踏んで進めていかなければ実現できないと思います。但し、こうした夢のような話が現実味を帯びて考えられ、科学がそこまで進歩してきたということに疑いの余地はありません。
  • 大学の場合は助成金を申請するのが一般的ですが、民間のクリニックでは研究費をどのように確保されているのでしょうか。また、企業とのコラボレーションについてもお聞かせください。
  • もちろんクリニックの場合でも医療機関として科研費(科学研究費助成事業)の申請はできますが、やはり大学のような大きな医療機関の方が助成金を取得しやすいということはあると思います。そのため、我々のように小さな医療機関ではクリニックの利益の一部を研究費に回しているのが現状です。メリットとしては自分たちが希望する研究に自由に資金を使えますが、利益をどんどん研究に注ぎ込んでクリニックが赤字にならないよう気をつけなければなりません。企業とのコラボレーションについては、基本的に業務提携という形で進めていきます。製薬会社や医療関係以外の企業、例えば観光ビジネスやスポーツ関連の会社とも連携して、双方にメリットがあるウィンウィンの関係を築き、お互いの業界の価値を高めていきたいと考えています。

※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。

木曜サロンとは

幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。

ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

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