サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- モチベーションを高めるインセンティブ設計 -自立支援型介護の推進を目指して-
開催日: 2020年9月24日
○活動の主旨、目的○
インセンティブとは単に金銭的なものを指すだけでなく、名誉や肩書、顧客からの感謝の言葉など多岐に渡ります。業種・業態や社内の風土や文化、さらには社員それぞれにとってどのようなインセンティブがモチベーションを高め、パフォーマンスを向上させるかについて考えるインセンティブ理論と、海野氏がこれまで取り組まれたインセンティブ設計の事例についてご紹介頂いた上で、現在研究を進めておられる「要介護高齢者の自立支援型介護の効果と介護事業者へのインセンティブメカニズム」について、また、今後自立支援型介護の効果をエビデンス化するために必要とされている技術や異分野連携についても伺いました。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
海野 大 氏
大阪成蹊大学経営学部 教授
博士(経営学:筑波大学)。1963年、東京生まれ。早稲田大学卒業後、NTTへ入社。サービス開発や新規事業に携わり、NTT、NTTコム、NTTファイナンスにおいてサービス開発部門の部長等を歴任。
NTT退職後、兵庫県の介護事業法人において取締役研究開発部長を務める。2019年から大阪成蹊大学に移り、データサイエンス分野を教育・研究。専門はオペレーションズ・リサーチ、インセンティブ理論。
ナレッジドナーインタビュー
- インセンティブを介護業界に導入しようと思ったきっかけを教えてください。
- 介護事業へのインセンティブの導入については、2000年に初めて介護保険制度が施行される前から政府内で議論されていましたが、結果的に当時は導入されませんでした。そのような状況の下、3〜4年前に「自立支援型介護」に出会いました。それまで私自身の親の介護の経験から、介護は世話をするだけの、亡くなるまでの手助けだと思っていましたが、自立支援型介護では単に助けるだけでなく、要介護者が元気になるような取り組みを積極的に行っていると知って非常に興味を持ち、私にも何かできないかと思いました。そこで、自立支援型介護によって要介護者が回復すると介護報酬が減ってしまうという話を聞いたことがきっかけで、インセンティブの仕組みを取り入れてはどうかと考えました。
- 金銭的なものでないインセンティブで介護従事者のモチベーションを維持することはできないのでしょうか。
- 確かに人はお金のためだけに働いているわけではなく、やりがいを感じたり、感謝されたりすることでもモチベーションは高まると思います。しかし、介護職は元々給与水準が高くなく、現在も人手不足ですので、ある程度待遇を良くして介護スタッフを確保しなければ十分なサービスが提供できなくなる恐れがあります。つまり、介護施設に対して何らかのインセンティブを出しておかなければ、スタッフを集められないという事態に陥ってしまいます。介護業界におけるインセンティブには2種類あり、ひとつは企業としての介護事業者に対するインセンティブ、もう一つは介護事業者からスタッフへのインセンティブです。国は介護事業の経営者へどのようなインセンティブを与えるのか、そしてその経営者は雇用するスタッフにどのようなインセンティブを出すのか、それぞれの方法を考える必要があると思います。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。