サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- 本当の仲間になるための解決方法 -ピアメディエーション教育のススメ-
開催日: 2021年1月21日
○活動の主旨、目的○
第三者に仲裁され、下される審判は、えてして納得できず、またその場限りのうわべだけの〝仲良し〟で終わってしまうことも多々あります。そんな押しつけの〝仲良し〟でなく、仲間内で、自分たちの手で和解解決を行うというのがピアメディエーションです。解決策を無理強いすることなく紛争中の当事者間の失われた対話を蘇らせることで、仲間(ピア)同士で様々な問題の解決を可能にするスキルを学びます。
このスキルを身に着けるためには、まず他人と自分との価値観や感性の“違い”を認識し、尊重することが求められます。ピアメディエーション教育は、欧米では人格教育(Character Education)としても実施され効果をあげています。
子どもから大人まで、また学校から企業や地域コミュニティーなど、人と人が関わる全てのシーンで活用できるスキルとその育成方法について伺いました。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
津田 尚廣 氏
一般社団法人ピアメディエーション学会 常務理事 / 弁護士法人なにわ橋法律事務所 代表社員
大阪市立大学卒業。司法修習終了後、弁護士登録(大阪弁護士会)。NPO法人シヴィル・プロネット関西においてメディエーション、ピアメディエーションの研究・普及活動に従事し、大阪府立茨田高校ではピアメディエーション事業を展開、ピアメディエーションの授業化等を実現。2017年にはピアメディエーション学会を創設。ピアメディエーションとEAPとを結合し、職場でのピアメディエーション事業も実践している。
ナレッジドナーインタビュー
- 「ピアメディエーション」を企業に導入される際のご苦労や難しい点は何でしょうか。
- 苦労と言えば、企業に「ピアメディエーション」(「Peer(仲間)Mediation(調停)」:仲間内のトラブルに中立的立場で関与し、和解解決を図る技法・方策)の費用対効果を理解してもらうのに苦労します。ピアメディエーションの効果は、はっきり目に見えるものではなく、まだ数値的に効果測定をする方法が確立されていないのです。現在効果測定の手法について取り組んでいる現場から、いくつか報告は出されていますが、万人の支持を得る確立された手法とはなっていません。そのため、企業が導入しようとしても、数値として効果を実証できないため、財務担当者から「これにお金を使って本当に効果があるのか。そんな余裕はない」などと言われ、役員会等で承認されるのが難しいこともあります。職場でピアメディエーションはどこまで求められるのかという問題もあり、中小企業だけでなく経済的に余裕のある上場企業でもとっつきにくい点があります。そこで、メンタルヘルス(EAP)の観点から、ピアメディエーションの導入によりハラスメント対策を図り、企業のコミュニケーション環境を改善する視点で効果の見える化を図っていくのが有効ではないかと考えています。
- 今後、ピアメディエーションの普及を通じて、どのような社会を目指したいとお考えですか。
- ピアメディエーションのみならず、メディエーションの本質は「自己決定」にあると考えています。自己決定とは、互いに他者について理解を深め、本当の意味での共生を理解し、その上で、自分たち自身で物事を決定するということです。民主主義の本質部分ですね。ピアメディエーションやメディエーションを取り組むことによって、この「自己決定」を理解し、身につけていくことが重要かと思います。今後、このような考え方が理解される社会になればと思います。日本が、もっと自分たちで物事を考え、解決し、自己決定できる社会になり、そうした社会環境下で人々が交流できるようになることが、我々の活動の大きな意味でのゴールだと考えています。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。