サロンイベントレポート

木曜サロンレポート

テーマ:
病原微生物ってそもそも何? -コロナ対策に必要な情報発信とモチベーションコントロール-

開催日: 2021年4月8日

○活動の主旨、目的○
人間が誕生するはるか以前から存在し、多種多様な世界を持つ病原微生物。
多くのものが、人を死に致らしめる極めて高度な戦略を持っています。なぜ彼らはそのような能力を獲得したのか、動物や人間との関わりからその一端をお話いただきました。 また、これまでの新型コロナウィルスコロナウイルスへの対応から見えてきた公衆衛生学の落とし穴について問題提起していただき頂き、今後の日本社会には何が必要となるかについて、参加者の皆さんと意見交換しつつ、将来の連携のきっかけを模索しました。
最後に新たな微生物検査技術の確立に向けて、これまで医学分野で採用されなかった技術の活用を試みる大学の取り組みについてもご紹介いただきました。
新型コロナウィルスコロナウイルスを見つめ直す1時間でした。

ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール

三宅 眞実 氏
大阪府立大学 生命環境科学研究科 教授

獣医学科を卒業後、農学修士、医学博士号を取得。 その後食品企業の研究所、アメリカの大学への留学を経験、千葉大学、大阪大学を経て2008年より現職。現在は獣医公衆衛生学を担当。一貫して「病原細菌が病気を引き起こすメカニズム解析」を研究するが、近年は食中毒原因細菌を材料として研究展開する。大学では学域長を、学外では日本食品微生物学会理事長、各種審議会委員等を兼任し、食の安全に関するアウトリーチ活動も行っている。

ナレッジドナーインタビュー

  • 微生物学や行動心理学が経済動向に深く関わっている状況において、各分野の研究者間のコラボレーションは行われているのでしょうか。
  • 微生物学・行動心理学・経済学の研究者間のコラボレーションは、最近までほとんど行われていませんでしたが、今ではこの連携が非常に重要だと多くの人が認識しています。それを示す代表的な例が、まさに新型コロナウイルス感染症です。私の考えでは、感染状況の推移と株価の動きには多くの類似性があると思っています。株価の動きは実質経済と連動しているのはもちろんのこと、心理的な要因によっても変動します。エピカーブ(感染症における新規感染者数を発症日ごとに集計し曲線グラフで示したもの)に見る感染者数も、行政からの要請とは別に、それぞれの人が感染状況をどう捉えるかという心理面によって大きく影響を受けて増減します。今まで感染症は疫学という理系の学問として捉えられていましたが、実は経済と同様に、数学の理論で裏付けられると共に、定量化しにくい人間の心理が果たす大きな役割を加味して分析する必要があると考えています。今後、両者をつなぐ科学的な分野が発展していくことで、感染症の予測疫学や制御法の開発がさらに発展していくのではないかと思っています。
    また、私が所属している大阪府立大学では、2025年の大阪・関西万博を念頭に置き、大阪市立大学と協調の上で、大阪府・市からの支援を受けて国際感染症研究センターを設立しました。このセンターには生命科学の研究者だけではなく、経済学者や行動心理学者にも加わっていただき、実際的な感染症対策を議論しています。
  • 将来パンデミックを起こす恐れがある、注意すべき病原体はありますか。
  • 注意すべき病原体はいつくかあります。ひとつはインフルエンザです。2009年に新型インフルエンザが発生した時には、幸い病原性がそれほど高くなかったのですが、今回の新型コロナウイルスのように病原性が高いインフルエンザウイルスが将来、発生する可能性があります。もうひとつは狂犬病です。日本では狂犬病は撲滅されましたが、現在世界で狂犬病が蔓延しています。近隣の中国や台湾でも発生していますので、いつウイルスが国内に入って来ても不思議ではない状況にあります。一旦侵入すると狂犬病ウイルスは野生動物の体内に潜みつつ、状況が許せば動物から人間に感染して、多くの人の命を奪う可能性があります。人間に対する狂犬病ワクチンの接種は簡単ではありませんので、一番の対応策は日本へのウイルス侵入を防ぐことと、犬へのワクチン接種を徹底することですが、現在、犬への狂犬病予防接種の接種率が下がっていることもあり、国内侵入の防御が大きな意味を持っています。

※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。

木曜サロンとは

幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。

ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

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