サロンイベントレポート

木曜サロンレポート

テーマ:
第8回ナレッジイノベーションアワード受賞者シリーズ第4弾
大型将棋と天円地方の思想 -初期平安京の復原-

開催日: 2021年6月3日

○活動の主旨、目的○
将棋は古くから日本に伝わる遊戯ですが、その起源は不明です。しかし、現代将棋よりも駒数が多い大型将棋が存在していたことがわかっており、高見氏は大型将棋と平安京などの都城造営の思想との間に、興味深く新しい関係性を発見されたとのこと。
考古学や歴史学の領域で、理系教授が“ゲーム”を起点に異分野から新たな仮説に挑戦し、古代の人々のロマンあふれる思想の解明を目指します!

ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール

高見 友幸 氏
大阪電気通信大学 デジタルゲーム学科教授

京都大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程修了。博士(工学)。
駿台予備学校物理科講師,京都大学超高層電波研究センター研修員等を経て現職。
研究テーマは,大型将棋史,盤双六史,大型将棋のDeep Learning, Pythonプログラミング学、古代都城と前方後円墳。 ゲーム学会,国際ICT利用研究学会,芸術科学会,地球電磁気・地球惑星圏学会、 史学会等の会員。

ナレッジドナーインタビュー

  • 大型将棋と都城造営の思想との間に新しい関係性を発見されたことで、歴史解明にどのような影響があるでしょうか。
  • 一番大きな成果は、将棋の起源が大型将棋なのか小将棋なのかという問題の解決を見たことです。摩訶大将棋の将棋盤が平安京の条坊と一致することで、大型将棋が平安時代前半に存在していた可能性が示されました。それと同時に、将棋の駒に現れている呪術性が将棋盤にも現れていることを示してもいます。これらは、将棋史の解明が初期平安京の知見により進んだものですが、逆に、平安京の解明が将棋史の知見によって進んだこともあります。たとえば、平安京は呪術に基づいた設計によるものであろうという結論はそのひとつです。つまり、条坊の設計は、都市工学の観点からではなく、天円地方の思想によるものであることが、平安京に仕組まれた、きれいな正方形の階層構造からわかります。なお、呪術という観点からは、平安京と風水の理論との関連がよく話題とされますが、これは間違っているでしょう。
  • 研究に関する今後の展開についてお聞かせください。
  • 今後は、古墳の形状から邪馬台国の問題へと展開していく予定です。解明に際してのキーポイントは、数字のもつ厳密性です。たとえば、平安宮は「方九里」という都城モデルの規範に基づくものですが、方九里の9里は、厳密に9里として設計されているという点がとても重要です。9里を実現するために条坊を区切る道幅が決まり、京の全体の大きさが、結局は、藤原京、平城京、平安京の3都城とも、一辺1500丈の正方形となって作られるわけです。このような設計数値の厳密性は、都城の位置関係、古墳の大きさ、古墳の位置関係にも見られます。たとえば、難波宮、平城宮、藤原宮をこの順で結ぶ線分はほぼ90度の直角を作ります。大津宮、平安宮、藤原宮も同様に直角ですし、恭仁宮、長岡宮、大津宮もほぼ直角です。こうした観点から何らかの結論を導くという手法は、文献史学や考古学に基づく従来の歴史解明の方法にはないため、何が得られるのか楽しみです。

※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。

木曜サロンとは

幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。

ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

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