サロンイベントレポート

木曜サロンレポート

テーマ:
COVID-19禍の今、『鉄道+都市文化』のビジネスモデルをつくった小林一三氏から学ぶこと

開催日: 2021年7月1日

○活動の主旨、目的○
阪急電鉄の事実上の創始者である小林一三氏は、単に鉄道を通すだけでなく、沿線において魅力ある郊外住宅地を開発することで地域のポテンシャルを高めて「がらあき電車」から、多くの人々が利用するという我が国の私鉄経営のビジネスモデルを創り上げました。

木曜サロンでは、土井氏より、その内容と成立した背景をたどりながら、私たちが学ぶべきことについてご紹介いただきました。また、現在、社会を変えるくらい大きな問題となっているCOVID-19と人々の移動を支える意味についても皆様と一緒に考えました。

ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール

土井 勉 氏
一般社団法人グローカル交流推進機構(GLeX) 理事長

京都市右京区生まれ。1976年名古屋大学大学院修了。同年京都市役所、1991年阪急電鉄。
2004年神戸国際大学経済学部教授、2010年京都大学大学院工学研究科・医学研究科安寧の都市ユニット特定教授、2015年大阪大学特任教授、2019年より現職。博士(工学)。技術士(建設部門)。
専門は「総合交通政策とまちづくり」で全国各地の現場で、移動の支援を通して魅力ある地域づくりに取り組んでいる。NPO法人 持続可能なまちと交通をめざす再生塾 理事。「探偵ナイトスクープ」に依頼者で出演したことがある。
主な論文:日本経済新聞「やさしい経済学・人口減少時代の公共交通」(2018年、8回連載)

ナレッジドナーインタビュー

  • コロナ禍における鉄道の経営戦略についてどのようにお考えですか。
  • よく分からないというのが正直なところですが、経営戦略を立てる上でいくつか条件があると考えています。人々の移動を支える我々は「エッセンシャルワーカー」ですので、コロナ禍でも稼働し、たとえ利用者が減っても運行しなければなりません。車両をガラガラの状態で走らせれば、人件費はかかるが収入は減るため、鉄道やバス会社はマイナスが蓄積しているというのが現状です。現在は蓄えていた資金で営業を続けていますが、それができなくなったら次はどうするか。社会経済活動の基盤である交通機関は営業を止める訳にはいきませんので、徐々に減便していくことになります。つまり、今までのようなクオリティの高い輸送サービスはできなくなるということです。これを回避するには2つの方法が考えられます。ひとつは行政からの公的支援を受けることですが、資金は税金ですので増税にもなりかねず、大変なことになってしまうかもしれませんね。もうひとつは利用者が支えるという方法です。運賃の値上げもその一例ですし、ビジネスの連携や駅管理の委託など、利用者が運営コスト削減に協力するという考え方もあります。これは鉄道だけでなく、社会生活のためのプラットフォームをどのように作っていくかという問題です。情報技術を活用してコストを削減していく仕組みなど、新しいビジネスチャンスが生まれる可能性もあると思います。
  • 今後の鉄道ビジネスの展望をお聞かせください。
  • ポイントになるのは物販だと思います。欲しい物を的確に提供する仕組みを構築する上で、鉄道やバスのインフラを上手く活用して販売チャンネルを広げていくことは十分考えられると思います。一方、注目が集まる自動運転技術については、実用化にはまだまだ時間がかかります。というのも、完全自動運転の車両は非常に高額になるためコストを回収するのにかなりの時間を要するからです。技術開発は急速に進んでいますが、自動運転の導入に関しては冷静な目で見た方が良いかもしれません。様々な要素や条件から今後の展開を見通していくことが求められると思います。

※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。

木曜サロンとは

幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。

ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

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