サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- あの頃のモスクワの日常
開催日: 2022年3月24日
○活動の主旨、目的○
かつてロシア国営放送アナウンサーを務め、青春をロシアで過ごした安本氏に、自らの体験をもとに、ロシア人たちの日常をお話いただきました。国や政治を越えた、裸の「ロシア」を知るための1時間となりました。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
安本 浩祥 氏
元ロシア国営放送アナウンサー
東京外国語大学ロシア語専攻入学後、タシケント国立東洋学大学、モスクワ国立人文大学へそれぞれ国費留学。ロシア国営放送「ロシアの声」アナウンサー、モスクワ国立大学ジャーナリズム学部講師を歴任後、現在、一般社団法人欧亜創生会議理事長、一般社団法人日本JC日ロ友好の会理事。 陸上自衛隊予備二等陸曹。TOEIC970、英検一級、ロシア語能力検定試験一級、仏検準二級など 特技は語学。ロシア外務省発行の外交雑誌『国際生活』日本語版の編集長も務める。
ナレッジドナーインタビュー
- 価値観が全く異なる日本とロシアの間に、何か共通点はありますでしょうか。
- ロシア語を学び始めてすぐの時ですが、ロシアの新聞を読んで、まったく意味が分からないという体験をしました。単語や文法は分かるのですが、何を言っているのか分からない。つまり、日本で「+」の意味を持つことが、ロシアでは「-」の意味を持つ、ということもあるわけで、そこの政治的な価値観といいますか、世界観の違いを理解するまで、しばらく時間がかかりました。一方、ロシアと日本で似ていると感じるところは、人間関係の一種泥臭さが挙げられるでしょうか。日本語の教科書には「はい」と「いいえ」という単語が載っていますが、実際の日常会話で、「はい」や「いいえ」は使わない、なにかその中間的なところでコミュニケーションをとっていますね。ロシアもまさに「ダー」と「ニェット」の間で、なんとなくな部分で会話が成り立っている、ここに一種独特のユーモアさえあります。大阪的と言えばいいでしょうか(笑)。
- 資本主義と社会主義、二つの社会を経験されて、どのようなことを感じられましたか。
- かつての「資本主義 VS 社会主義」の構造は、資本主義が社会保障を充実させてきたことによって、現在の世界ではほとんどの国が社会主義なのではないかと思います。一方で、ソ連崩壊により経済に大混乱をきたしたロシアでは、90年代はマフィアが横行し、「むき出しの資本主義」の時代でした。マフィアの抗争なんていうのは、ある意味、すべてが実力次第、「完全なる自由競争」なわけですよね(笑)。逆に言うと、法の支配なんていうのは機能しない。人々は法に頼ることができないので、友人や知り合いとの人間関係、人脈こそが最大のセーフティネットになるわけです。だから、ロシアでは人と人とのつながりをとても大事にします。困ったときには友人が助けてくれる、その代わり、友人が困ったときには自分が助ける。このような人間関係は、実はソ連時代から、制度の足りないところを補う仕組みとして、ずっとあったわけです。ですから、資本主義や社会主義とか、ひいてはそれぞれの国の利害とか価値観とか、そんなものの違いは実は騒ぎ立てるほどのものでなく、人間社会の根本には人間関係がある、という単純なことなのだと思います。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。