サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- ワイヤレス充電システム「SMART CHARGER」開発秘話
開催日: 2022年12月1日
○活動の主旨、目的○
ワイヤレス化が進む社会で、電気が飛ばない現状について、またスマホやあらゆる機器のワイヤレス充電化が進みつつあるが、電気を飛ばすことができるようになればコンセントが不要になり、電源に縛られない自由な世界が実現するというコンセプトについて解説。
数年前からアメリカの一部店舗ではワイヤレス充電が実装されたが、机に穴を開ける必要があったため、穴を空けずデザイン性を損なわない埋め込み式の技術を開発。机メーカーとの共同で開発中の充電機能付きの学習机についてご紹介頂いた。
今後は4つの特許技術を活用し、モジュールの提供や商品開発に取り組んでいるが、スタートアップではよくある事情として、特許を侵害された場合の対応の難しさについてもお話頂いた。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
池内 智彦 氏
株式会社エレクトロンヴェクシー 代表取締役社長・CEO
2000年3月 大阪市立大学大学院工学研究科博士課程修了、博士(工学)
2000年4月 大阪大学大学院工学研究科ポスドク
2002年4月 神戸大学内海域環境教育研究センター助手(現,助教)
2006年10月 大阪大学先端科学イノベーションセンターベンチャービジネスラボラトリー部門 特任研究員を経て特任講師
2011年4月 大阪大学大学院工学研究科精密科学・応用物理学専攻 特任研究員、CREST研究員を経て特任研究員(常勤)
2015年5月 大阪大学大学院工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻特任研究員を経て招聘研究員
2017年8月 株式会社エレクトロンヴェクシーを設立
2021年10月~ 大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻社会基盤工学コース招聘研究員
ナレッジドナーインタビュー
- 大学の研究員から起業に至った経緯を教えてください。
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大阪大学 先端科学イノベーションセンター ベンチャービジネスラボラトリー部門に所属しているときに、自身の研究をしながら、学内発のベンチャー企業を技術、特許の面から支援していました。また既にある特許を使えないか?との相談も受けていたが、技術特許が専門的なため使って頂く企業への説明は非常に難しく感じていました。
そうした中で、現在ナレッジサロンで提供中のワイヤレス充電に関連する4つの特許と出会いました。私も初めはどんな特許なのか全く理解していませんでしたが、大学内の色々な先生に見ていただいて話を伺ううちに、これらは非常に素晴らしい技術、特許であることがわかってきました。しかし、技術的内容が難しすぎて、それらの価値を理解して活用しようとする人はいませんでした。それならと自分自身で活用することを思い立ったのです。今まで様々なベンチャーを見たり、サポートしたりという経験もありましたので、起業という決断に至りました。 - 特許権の侵害などにはどのように対応されていますか。
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特許というのは行使しなければ単なる紙切れで、行使して初めて意味をなすと言われますが、その通りです。特許の本来の役割は、完成した商品やサービスを守ることであって、特許そのものが意味をなすのもでは本来ありません。例えばよい商品やサービスを他の企業に真似される恐れがあるときに、特許があると本来は「容易に」真似されないものですが、仮に特許権侵害されたとしてもベンチャー企業には資金力がないことが多いため、特許侵害にすぐさま対応をすることは難しいと感じています。
そのようにして考えると、起業した当初は特許を持っていることに優位性があると思っていましたが、実際にはどちらかというと特許ではなく、生み出される商品・サービスにこそ価値があるのだと改めて気付きました。「なかなか真似のできない良い商品・サービスは特許を凌駕する」のです。そのように考え方を転換すると、「いかに良いものを作るか」に注力することが重要だと思います。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。