サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- 世界に誇るだんじり木彫りの技! ~コラボレーションの可能性~
開催日: 2023年3月2日
○活動の主旨、目的○
小学3年生の時、地元堺市のだんじりがきれいに修理されて返ってきたことがきっかけで将来の夢がだんじりの彫刻師となった前田氏。
岸和田で彫刻師になって13年間、だんじりしか彫っていなかったが、70年使えるだんじりを平成30年間でほぼ全てリニューアルしたことで仕事が激減。また伝統工芸であるだんじり産業に中国が参入したことでだんじり業界に疑問を持つようになり、岸和田から離れることを決意。今までの考えから振り切ったほうが面白いと考え大阪市内に株式会社木彫前田工房を設立。木彫り師が工房を法人化することは過去に例がなかったが、なくなる一方の伝統工芸を守るには、ものづくりがしたいと思う若者が“伝統工芸に従事したい”と思えるような環境を作ることが必要と考え法人化したとのこと。
だんじりから離れたことで、ベトナムに進出した三日月ホテルや伝統工芸を守りたいと考える星野リゾートと仕事をするようになり、木彫りの置物や額縁など海外に出品することも増え、作品が評価されるようになった。今では木彫りの可能性は無限大だと感じるようになったとお話いただいた。
最後に、木端や木屑の再利用についてのお話があった。
ヨーロッパで再利用の文化が進んでいることを目の当たりにし、木彫り作品を作る際に出る木端や木屑を再利用できないかと模索し始めたがなかなかうまくいかない。木端や木屑を再利用できる企業があれば紹介してほしいと呼びかけられた。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
前田 暁彦 氏
株式会社木彫前田工房 代表
1976 年大阪生まれ。1999 年弟子入りし 10 年の修行の後、 2008 年木彫前田工房設立。
2021年株式会社木彫前田工房として法人化。
お客様のご要望にお応えするのは勿論のこと、そこにいかに「前田らしさ+α」を加えるかに挑戦し、「前田にやってもらって良かった」と言っていただけるような彫師、人間に なろうと思っております。
「木彫前田工房」の社訓でもある「知行化他」の言葉を胸に、弟子達にも受け継いでもらい、ここ岸和田の地車彫刻というすばらしい文化と技術を、日本のみならず世界に広めていきたいと思っています。
ナレッジドナーインタビュー
- 著書『好きなことを仕事に変えた木彫師』を出版されたきっかけをお聞かせください。
- 岸和田で仕事をしていた時に、出版社の方から「何かしませんか?」とオファーをいただきました。その当時ブログを書いていて、それを見て「だんじり彫刻」を作っている日本人が海外進出している点に着目されて、ご連絡くださったそうです。ただ、コロナの影響で編集作業が大幅に遅れてしまい、予定より約1年半遅れでの出版になりました。
- 今後はどのような事業展開を目指していらっしゃいますか。
-
私個人としては、「だんじり彫刻」をアートとして展開し、世界中で発表することを目指しています。
会社としては、日本の伝統産業を日常生活で使えるものに落とし込んでいきたいと考えています。ターゲットは海外で、ちょうど今オランダのデザイナーにコースターやプレートなど、海外向けの商品をデザインしてもらっているところです。
実は、ヨーロッパでは日本の伝統工芸とヨーロッパのデザインを掛け合わせることが流行っています。すでに「メイド・イン・ジャパン」の技術は世界で認められ、評価されていますが、伝統工芸をそのまま持って行っても海外では受けません。「世界が認める確かな技術でモダンなデザインのものを作る」ことが成功のポイントです。
今後も、デザイナーとのコラボレーションで海外向け商品の製作・販売をメインにやっていければと思っています。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。