サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- ナレッジサロン科学捜査班 -異分野連携でえん罪から人々を救う-
開催日: 2023年8月24日
○活動の主旨、目的○
まだ字も満足に読むことができない幼少期に漫画『はだしのゲン』に強烈なインパクトを受け、弱いものが理不尽な扱いを受けることに憤りを感じ、その後『アンネの日記』や『リンカーン伝記』などを読んだことから弁護士を目指すことになった経緯についてご紹介頂いた。
次に、私人と私人の争いである民事裁判と、国と私人の争いである刑事裁判の違いについて、また刑事裁判は被告人の罪を明らかにするためのものというよりは、証明責任を負う検察の証明が正しいのかを追求するもので「疑わしきは被告人の利益に」という無罪推定の原則に則るべきであるという考えについて解説頂いた。
そして、さまざまな事例をもとに人質司法などのえん罪が生み出される原因について、またアメリカの司法の取り組みを基に、いかにすればえん罪を生み出さない司法制度を作ることが出来るのかについて解説頂き、最後に笹倉氏が立ち上げた2つのえん罪救済団体の取り組みについて、特に大阪での件数が圧倒的に多かったSBS(乳幼児揺さぶられ症候群)のえん罪事件に関する支援活動についてご紹介頂いた。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
笹倉 香奈 氏
甲南大学 法学部 教授
東京大学法学部卒業、一橋大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。甲南大学教授。専門は刑事訴訟法。在外研究でアメリカに留学中、ワシントン大学のイノセンス・プロジェクトの活動に参加した。えん罪救済のための活動がアメリカの刑事司法を大きく変えたことを見て、日本でも同様の活動を立ち上げられないかと考える。帰国後、イノセンス・プロジェクト・ジャパンを設立し、現在は事務局長。イノセンス・プロジェクト・ジャパンのほか、こども虐待えん罪の救済に焦点をあてたSBS検証プロジェクトの共同代表をつとめる。
ナレッジドナーインタビュー
- えん罪に巻き込まれないために気を付けるべきことをお教えください。
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もしいわれのない罪で逮捕された場合、まずは弁護士を呼んで助けを求めることが必要です。弁護士の知り合いがない場合には、弁護士会が無償で弁護士を派遣してくれるという当番弁護士制度があります。家族でも、当番弁護士を呼ぶことができます。専門家である弁護士に助けを求め、適切なアドバイスを受けてその後の対応を考えてください。
そして、当番弁護士が来るまで、黙秘してください。私たちには「黙秘権」という権利があります。例えば皆さんは、1ヶ月前の夕食に何を食べたか覚えていますか?おそらく全然覚えていないですよね。しかし、警察の取り調べでは、半年前や1年前に、いつどこで何をしていたかといったことを質問されることがあります。そこで、「あの時、あんなことをしていたかもしれない」と発言してしまうと、それが警察の持つ客観的な証拠と異なる場合、犯人だと決めつけられて取り調べが進み、最終的に真実が歪められる可能性もあります。このようなことをなくすために、まずは黙秘権を行使することが非常に重要です。
以上のように、自分へかけられた疑いを食い止めるための自己防衛手段を取ることが大切です。 - 正しく権力を監視するために必要なことは、何でしょうか。
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権力を監視する前提として、透明性が必要だと考えます。例えば司法に関しては、私たちも裁判の傍聴に行って、裁判所で何が起こっているのかを見ることができます。さらなる情報公開を求めていく必要もあるでしょう。
メディアや市民が権力構造に関心を持つことで、権力の透明性を高めるための取り組みが行われ、確保されていくと思います。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。