サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- ハーバード大学卒アーティストが語る -アートを有意義に活用するビジネスパーソンになるために-
開催日: 2023年11月2日
○活動の主旨、目的○
丹原氏は作家としての活動と合わせてキュレーターとしても活躍されていて、キュレーターの仕事は作家と鑑賞者の間に立ち、どのような文脈でどのように作品を見せるかを考えることが仕事とのこと。そんなキュレーターとしての仕事についてこれまで携わってきた展覧会の事例と共に解説頂いた。
次になかなか答えが出ない問いとして「アートとは何か?」という問いに切り込み、料理や芸人になぞらえつつ、丹原氏の考えである「アートは新たな価値を提供すること」という考えを様々な作品と共に紹介頂き、そんな作品の価値を多様な切り口で捉え直し提示するキュレーションの面白さにも改めて触れて頂いた。
最後に今回のテーマにもある、「アートを有意義に活用するために」必用なことして、まず“活用すること”と“実践すること”の違いをふまえた上で、企業案件などではアートを用いることで“安く・早く・美味く(上手く)”解決できる課題が存在すること、そしてそのような活用方法を理解するには何より自分自身が作品を作ってアウトアウトプットしてみることが重要で、すでに展開されているビジネスマンにアウトプットの方法を教えるプログラムについてご紹介頂いた。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
丹原 健翔 氏
アマトリウム株式会社 代表/作家、キュレーター
作家、キュレーター。92年東京生まれ。ハーバード大学美術史学科卒業。作家として活動する傍ら、美術展覧会の企画・キュレーションを行う。「ソノアイダ #新有楽町」プログラムディレクター、「Yurakucho Art Urbanism」実行委員など。主な展覧会に「未来と芸術」展(19年、森美術館、Another Farm名義)、「デバッグの情景」(22年、ANB Tokyo、東京)、「無人のアーク」(Study: 大阪関西国際芸術祭 2023、大阪)など。
ナレッジドナーインタビュー
- ご自身の幅広い事業や活動に通底する理念はどのようなものですか?
- 「結局、私は何の仕事をしているか?」ということを突き詰めると、「良いものをより良いものとして見せる」ということだと思います。どんなに良い作品でも、キュレーションや見せ方が悪ければ、ひどい作品に見えます。企業の案件でも同じことが言えますね。例えば、新しい技術によって新しい世界が体験できる企画があったとして、その見せ方が悪いだけでせっかくの技術も「あー、そういうものあるね」ということで終わってしまいます。体験者により強く、深く訴えかけるためには、新鮮な目線でその「技術」を分析し、その魅力の 面白さをちゃんと 伝える工夫が必要です。「良いものをより良いものとして見せる」こと、これは私のすべての活動の根底にある考えだと思います。
- 日本のアート業界について、どのような課題を感じておられますか?
- 幼い頃からアートに親しむ機会が少ないことや、学校の美術教育に体系化の概念が乏しいことなどから、美術の分野は多くの人に何かを届ける意義があるはずなのに、「私みたいな凡人にはわからないもの」といった苦手意識や敬遠の思いが一般的に見られて、それはアートをビジネスに活用する領域でも担当者の方などから感じられます。経験論ではありますが、近年のアートを活用したビジネスの事例の中でも特に成功しているものは、担当者がアーティストを尊重し、理解してあげることができる方であることが非常に多いです。一方で、アートそのものを体系化することが難しいように、アートに関連する仕事に求められる能力も体系化して理解することが非常に難しいというのも事実です。そういうわけであくまで仮説ですが、僕はビジネスパーソンも制作という体験をすることが鍵になると考えています。自分の名前がついている作品を社会に発表する覚悟、言語化できない思いやイメージを作品として伝える工夫、良し悪しはあるかもしれないが正解不正解はない評価軸。こういった体験をしているから20歳ぐらいの美大生でも社会経験があるビジネスパーソンより「わかっている」ようになるのだと思います。私が校長を務めるOUT SCHOOLという社会人向けアートスクールでは、まさにそういった即戦力的な経験を1ヶ月で得ることを目的として設計しています。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。