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サロンイベントレポート

木曜サロンレポート

テーマ:
昆虫のすごい世界 -多様性・応用・未来-

開催日: 2023年12月21日

○活動の主旨、目的○
昆虫の多くは寿命が短く世代交代が速いが、これは「短期間で進化が生じやすい」ことを意味する。人間は時に害虫に悩まされるが、彼らの「短命」という特性は、農薬耐性を短期間で獲得するのに有利に働く。進化の速さを含めた昆虫類の様々な特性は、彼らの多様性を劇的に高めてきた。社会性を持つ種や、成虫が幼虫に食べやすいように食物をかみ砕き与える種、農業を行う種、化学物質を巧みに使ったコミュニケーションを行う種など、人間顔負けの世界がそこには広がっている。今回の講演では、昆虫類のその圧倒的な多様性についてご紹介いただいた。また、「昆虫のすごい世界」を応用した技術として、モルフォチョウ蝶の翅(はね)のキラキラを応用した生地や、蚊の針を応用した「痛みの少ない注射針」など、バイオミメティクスの分野に関わるお話もしていただいた。

加えて、生態系における昆虫の役割のお話もしていただいた。生態系における昆虫の役割としては、栄養源、分解、害虫防除、送粉、土壌改良などがあり、地球環境の維持において昆虫は欠かせない存在と言える。例えば送粉についてみると、マルハナバチなどのハナバチ類は植物の花粉媒介において重要な役割を果たしているが、こういったものの種多様性の低下は、植物の種多様性にも影響しかねず、それを通じて他の生物の衰退も招きかねない。
現在は6度目の大量絶滅時代と言われているが、それを考える際のキーワードのひとつは「ヒト」である。我々は自然の恩恵なしでは生きていけないため、幅広い視野で自然を眺めつつ、「自分に何ができるか」を1人1人考えて行動するのが重要と言える。
西中氏は最後に、教育を通じて人々の生き物の知識を高め、それによって「見える世界」を広げることの重要性を強調していた。、見える世界が広がることで、人々の生き物に対する興味関心も高まる。そうすると、自ずと知識を高めようとする。西中氏は、このような「正のフィードバック」の回路に人々を乗せることが、昆虫を含めた自然の恩恵をこれからも得ていくうえで重要であると語り、締めくくられた。

ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール

西中 康明 氏
学校法人神戸学園 神戸動植物環境専門学校
農学博士

京都市出身。近畿大学農学部、大阪府立大学大学院農学生命科学研究科で里山のチョウ類の保全に関する研究に従事。農学博士。生物分類技能検定2級(動物、植物部門)、公園管理運営士、ドローン操縦技能(民間資格)などの資格を有する。これまでに環境調査員や生き物展示施設職員、公園管理職員、大学非常勤講師などを経験。現在は専門学校の教務部に所属し、野生生物ゼミ担任など学生指導を務める。主な担当授業は昆虫学、学術研究論、博物館学など。
推しの昆虫は『ルイスツノヒョウタンクワガタ』

ナレッジドナーインタビュー

  • 昆虫を好きになったきっかけはありますか?
  • 物心がついた時にはゴミムシを普通に捕まえていました。幼稚園かそれより小さかった頃からなのではと思いますが、気がついたら虫を捕まえることが当たり前の生活を送っていました。ただ、中学・高校生にもなると周りは虫の採集などしなくなりますし、親からも「虫の道では将来食べていけないから他の事にも目を向けて欲しい」と思われていたようなので、その時期は昆虫から離れていました。その反動で大学生時代に昆虫への興味が爆発してしまいましたが。
  • 今後取り組んでいきたい研究課題があればお聞かせください。
  • 現状なかなか研究に取組むことができていませんが、「人工島の生物の特徴について関心を持っています。勤務している学校が六甲アイランドという人工島にあるのですが、ここにはカマキリの仲間が数種類生息している一方で、その天敵であるハリガネムシについては、学生と共に調査したものの、島内で発見できませんでした。もしかすると、六甲アイランドは、ハリガネムシなど移動能力の乏しい寄生者が侵入できない、カマキリにとって天敵フリーの状態になっているのでは、と考えています。今後、この人工島だけでなく、本土側におけるハリガネムシの分布についてもより詳しく調べていけたらいいなと思っています。

※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。

木曜サロンとは

幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。

ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

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