サロンイベントレポート

木曜サロンレポート

テーマ:
つなぐ 100年企業 5代目社長の葛藤と挑戦

開催日: 2024年4月11日

○活動の主旨、目的○
富山県高岡市で高岡銅器の鋳物メーカーとして1916年に創業し、真鍮製の仏具、茶道具、花器を主に製造していた能作。同業他社と戦わない、営業活動をしない、儲けを優先しない、という能作の「しない」の経営方針の下、2004年からは柔らかい、抗菌性が高いなどの特性を活かした錫100%の製品も展開している。また、自社の工場見学や旅行の企画・運営をするなどの産業観光業、結婚10年目の結婚記念日を祝う錫婚式を挙げるブライダル業など、新たな価値の創造、地域や異業種をつなぐことにも取り組んでいる。
昨年代表取締役社長に就任した能作氏には、これからやりたいことがたくさんあるとのこと。
能作のスローガンは「人と地域と能作」。自身の役目は伝統をつなぎ、地域をつなぎ、異業種をつなぎ、人をつなぎ、そして家族をつないでいくこと。モノを作る会社ではあるが、幸せを提供し続けられる会社でありたいとお話された。

ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール

能作 千春 氏
株式会社能作 代表取締役社長

富山県高岡市出身。神戸学院大学を卒業後、2008年に神戸市内のアパレル関連会社で通販誌の編集に携わる。2011年に家業である株式会社能作に入社。現場の知識を身につけるとともに受注業務にあたる。製造部物流課長などを経て、新社屋移転を機に産業観光部長として新規事業を立ち上げる。2018年に専務取締役に就任し、能作の“顔”として会社のPR活動に取り組む。2023年3月20日、代表取締役社長に就任。著書に「つなぐ 100年企業5代目社長の葛藤と挑戦」(幻冬舎)がある。

ナレッジドナーインタビュー

  • お客様と接してきて特に嬉しく感じたことや印象に残っていることがあればお聞かせください。
  • あえて挙げるとすれば子供達の声が一番嬉しいです。一つストーリーを紹介すると、以前小学生の女の子のお母様から、「親子で工場見学に行って以来、娘がずっと能作の職人になりたいと言っています。休日のたびに工場見学に行きたいとねだられ、連れて行けば飾られている花瓶などの作品の前から動かなくなってずっと見ているのです。この子が将来能作で働けるようになるためには、どのような教育をすればよいでしょうか?」というメールが会社宛に届いたことがありました。とても幸せなことだなと感じましたね。その子が将来従業員になってくれるのかはまだ分かりませんが、小さな頃から地域の産業に興味を持ち、シビックプライドを持つことのお手伝いをさせていただけたということが、能作は子どもの教育にも良い影響を与えているのだと改めて実感できとても幸せな気持ちになりました。もちろん、単純に製品やデザインを気に入ってくださって「デザインが素敵!」といった言葉や、「これでお酒を飲んだらとても美味しかった」といったようなお褒めの言葉を掛けていただくことも、能作の製品はその方の人生の転機に関わることができているのだなという気持ちになれるのでとても嬉しく感じています。
  • ご自身が思う高岡という街の一番の魅力は何ですか。
  • 高岡はものづくりの街だということを子どもたちに伝えるための教育環境が整っているところが、一番素晴らしいと思っています。高岡市は2006年に国の構造改革特別区域計画「高岡市ものづくり・デザイン人材育成特区」の認定を受けていて、市の歴史的、産業的、教育的特徴を生かした独自の必修教科として「ものづくり・デザイン科」の授業が実施されています。子どもたちは小学校5,6年生と中学1年生の時に高岡銅器、もしくは高岡漆器について授業で学ぶことになっています。こうした取り組みは全国でもあまり例がないと思います。能作も10年以上前から授業の受入れ協力をしているのですが、この授業がきっかけになって能作で働きたいと志望してきて社員となった者もいます。長い歴史の過程で様々な日本の伝統工芸が失われてきましたが、高岡のものづくり文化が400年続いてきたことは本当に貴重なことだと思っています。鋳金のほかにも着色や彫金、美しい仕上げ加工など、高岡の地で受け継がれている様々な技術を世間にもっと知ってもらうための活動も、能作として大切にしたいことだと、父といつも話しています。街全体でものづくり産業の底上げをしていきたいと強く感じています。

※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。

木曜サロンとは

幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。

ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

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