サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- 【実演有】知っておきたい「講談」の世界 -知的好奇心の扉の前に連れてくる話芸とは?-
開催日: 2024年7月18日
○活動の主旨、目的○
講談は、もともとあった事実に尾ひれはひれをつけながら面白おかしく歴史を伝えるもので、講談師は、英語に訳すとStorytellerとなる。江戸時代、歴史の授業で先生が歴史の本を読んでいる最中に、眠くなる子に向けて机をたたいたことが講談の始まりと言われている。それがどんどんエンターテインメントとなり、そこからは次第に、様々なところで取材したものを物語にするようになっていった。その時に生まれたのが忠臣蔵や太閤記などで、現在講談の世界には4,500のネタがあると言われている。今回その中から、「雷電の初土俵」をかいつまんで実演いただいた。
南歩氏のもう一つのライフワークである「ヒューマン講談」。これは、歴史上の人物の武勇伝や物語ではなく、現代のいわゆる歴史に残らない方々に、南歩氏が自ら取材をして講談で物語にするというもので、これまでに出会った方々とのエピソードなどをいくつか教えていただいた。
誰にでも最高の歴史がある。最高の歴史があるということは、だれもが平凡な偉人であるということ。あなたの人生は素晴らしいと言い続けることこそが自身の講談師としての使命だと感じている。これからも皆様の人生語らせていただきたいと締めくくられた。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
旭堂 南歩 氏 (きょくどう なんぽ)
上方講談協会
1991年10月22日生まれ
古典講談を師匠から継承すると共に、「平凡な偉人を後世に」をテーマに、庶民を主人公にした一代記物語を創作・披露する「ヒューマン講談」で、全国各地の自宅からパーティ、イベントを訪ねる。
修行時代は此花区千鳥温泉の上に住んで、風呂掃除しながらネタを覚えた。
(芸歴)
2019年3月 上方講談協会会長・旭堂南左衛門に入門
2021年5月 2年の修行を経て年季明け
2022年5月~東京・博多・城崎での定例会を開催
2023年11月 二つ目昇進
ナレッジドナーインタビュー
- 舞台に上がる前に心がけていることはありますか。
- ベタかもしれませんが、舞台に上る前に舞台袖で「いい講談をして喜んでいただけますように」と心の中で一度復唱するようにしています。過度に緊張してしまう原因を考えたときに、「自分をよく思われたい」とか「今日をきっかけに新しい仕事に繋げたい」と、自分のために舞台をやろうとしてしまうからこそ緊張するのだろうなと思ったので、「今日来ていただいている方が喜べば120点!」と、舞台袖で再認識するように決めています。実は今日もとても緊張していたのですが、「今日、上手くできたらええ仕事が舞い込むと思ってるんちゃうの〜?」と講演前に自分を問いただし、舞台に立つ前の心構えを再認識することによって、緊張がほぐれたように感じます。
- ヒューマン講談を制作される際に行うインタビューでは、いつもどのような工夫をされていますか。
- エピソード自体がそもそも面白い場合にはそれで充分なのですが、中には淡々とお話しされるような方もいらっしゃいます。その場合には、その方にとっての大きな出来事についてお話しいただいたタイミングで、どのような感情を抱いたかを聞くようにしています。それをきっかけに、その出来事が長いドラマの始まりなのか最後なのか中間部分なのかを知ることができるのです。かつてとある老舗喫茶店のマスターにインタビューしていた時に、話の最中でマスターがふと「骨折してもうてなぁ」と溢されたので、それって悲しかったですか?と聞いてみたところ「少しホッとした」という意外な答えが返ってきました。開店50周年を迎えてまだ続けなあかんのかなと思っていたタイミングで骨折して、これでやっと営業を終了できるきっかけが出来たと思いホッとしたということだったのです。この話を聞いて、マスターにとっての骨折という出来事はドラマでいう49分過ぎからの佳境シーンなのだろうなというイメージが湧きました。一方で、マスターの娘さんからすると、マスターの骨折という出来事が「この喫茶店でイベント利用を始めるきっかけとなった」という起承転結でいう起の、物語の始まりになるのです。このように、同じ出来事でも相手と感情によってシーンが変わるので、取材をする際はひたすらに出来事が起こった時の感情を聞いてドラマのどの部分なのかをイメージするようにしています。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。