サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- 【下町ディープテック】「空気からつくる糸」圓井繊維機械に学ぶ、限界突破のモノづくり
開催日: 2025年1月30日


○活動の主旨、目的○
今回は、圓井繊維機械株式会社の新規事業部長・圓井氏に、「空気からつくる糸」プロジェクトやモノづくりメーカーとしての取り組みについてお話いただいた。
繊維機械製造の枠を超え、先端技術を活用した新規事業を展開されており、講演では、CO₂と水素から合成繊維を生み出す「空気からつくる糸」プロジェクトや、医療・航空・自動車分野への応用技術が紹介された。特に「空気からつくる糸」は、環境負荷を低減しつつ高強度を実現する持続可能な繊維として注目され、今後の市場展開が期待されているという。
また、ものづくりについてアイデアを持つ企業と連携し、実現可能性を検証するラボ機能を提供されており、多数の取引先とのネットワークを活かし、技術開発や産学連携を促進しながら、技術の探究を支援しているとのこと。
圓井氏は、自社について「技術の駆け込み寺」と位置づけ、技術課題を持つ企業の相談に応じながら、ものづくりの発展に貢献する「One Team」構想を語り、講演を締めくくられた。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
圓井 仁志 氏
圓井繊維機械株式会社

ラグビーコーチ業、中・高の学校教員を経て、飲食業・造園業・建設業を起業するもすべて撤退し、教育・メンタリング・コーチング・事業コンサルなどの活動にシフト、並行して家業である圓井繊維機械(株)新規事業部長に就任。同社の持つ繊維加工技術で繊維技術のイノベーションを創出することを主目的としている。「空気からつくる糸」POM繊維製造販売事業のカーブアウト起業を準備中。
受賞歴:経済産業省によるアクセラレーション「始動Next Innovator2023」でシリコンバレー派遣選抜及び年間最優秀賞、関西みらいベンチャーアワード「みらいWay」でファイナリスト及びナレッジキャピタル賞を受賞
ナレッジドナーインタビュー

- 中小企業ならではの魅力について教えてください。
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1番の魅力は「オーナー企業なので新たなことに挑戦しやすい」ところだと思います。
上場企業になると、株主総会での意見が非常に重要になってくるうえに、世界規模の視点で物事を判断する必要があります。それが大企業の担う役割なのだと思いますが、新規事業ひとつにしても、相当規模の収益が見込めなければ社内稟議すら通らないような実情があるのではないでしょうか。
対してほとんどがオーナー企業である中小企業、例えば弊社の場合は、数百万〜1億円程度の売上げ見込みでも、意義を感じれば勢いで取り組めてしまいます。 POM繊維事業のように、今まで当たり前に普及していた素材をこれまでに無かった新素材で代替するという、大企業ならばリスクを鑑みてリソースを割けないような事業も、中小企業だからこそ挑戦できてしまうのです。それが大きなイノベーションにつながる余地は十分にあると思っており、スタートアップ界隈でも、とにかく「えいや」で始める行動力を持て、「Thinker to Doer」と教えられています。
そうした意味でも、中小企業こそが国内で担う役割は非常に大きいと思っています。 - 今後の展望についてお聞かせください。
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現在はディープテック・スタートアップが大注目されていて、日本政府も「スタートアップ育成5か年計画」の中で、そうした事業に投資をしていくと言及しています。とはいえ、国の助成金の額ひとつにしても海外と日本では規模が大きく違います。
例えば、フランスのベンチャー企業の場合、事業によってはシード期から数十億円規模の助成金を受けることができます。さらに投資家からの出資金もあるため、それを元手に大工場を造って、一気に事業を成長させていくことができるかもしれません。一方、日本のスタートアップでは、特にディープテック事業では国の助成金と投資家からの出資金だけで新規事業の全てを完結させることは難しいと思っています。
しかし視点を変えると、新規事業のための新しく大きな工場は建てられなくても、日本には製品を製造可能な工場を持つ優秀な中小企業があります。
例えば、スタートアップが事業のアイデアを出して、中小企業が工場での製造を担って、世界に名の知れた日本の大企業がタイアップしてグローバルに販売していくような。
うまい繋ぎ方はまだ模索中ですが、弊社としては各業界がそれぞれの強みを活かして連携し、皆でイノベーションを起こしていくような方法で成功していきたいと考えています。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。