サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- 音楽が脳を覚醒させる!最新科学で解き明かす音楽の驚異的な力
開催日: 2025年2月20日


○活動の主旨、目的○
IQというのは人生であまり変わらないと言われているが、「モーツァルト効果」というものがあり、モーツァルトの音楽を聴いたあとはIQテストの点数が8点ぐらい上がることから、モーツァルトを聴くビジネスも流行ったという。
また、「失行」(脳の障害によって、運動機能はあるのに思ったような動作ができない状態)という認知症の問題に取り組んでいることをお話された。
音楽を聴くだけで運動の準備ができ、ドラムを叩くことを3ヶ月続けると掌屈(手首の関節を手のひらの方向に折る動作)の角度が非常に上がり、自分で食事ができるようになるなどの効果が得られるとのこと。高齢者には、コントローラーや視線入力等は難しいが、VRの力も使って「VR吹き矢プログラム」ということを実施しており、吹くだけでゲームが完了し、呼吸機能のトレーニングになるという。交流会ではVRのデモ機を体験する機会も設けられた。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
宮﨑 敦子 氏
東京大学先端科学技術研究センター 身体情報学分野 特任研究員 医学博士

東北大学大学院医学系研究科脳機能開発研究分野で博士課程を修了し、理化学研究所の研究員を経て、2020年4月から現職。
研究分野は認知脳科学とリハビリテーションで、特に音楽やリズム、バーチャルリアリティ(VR)を活用した認知症予防や改善に焦点を当てている。 具体的には、ドラムを用いた上肢運動計測による認知症スクリーニング手法の確立や、VRを用いた高齢者の視空間・呼吸・嚥下機能改善プログラムの実証的研究など、多岐にわたる研究を行う。
また、「Dr.DJ.ATSUKO」としてDJ活動も行っており、音楽と脳の関係に関する研究成果を広く社会に発信している。2023年10月には、音楽を使った脳トレに関する著書『すごい音楽脳』を出版し、音楽が脳のパフォーマンス向上に与える影響について最新のエビデンスとともに紹介。
さらに、ダンス・ボーカルユニットTRFと共同研究で、健康長寿プログラムDVD「リバイバルダンス」の開発や検証にも携わり、音楽やダンスを通じた健康促進活動にも積極的に取り組んでいる。
ナレッジドナーインタビュー

- 一度社会人を経験された後、大学院に進学されたきっかけをお教えください。
-
30代でレコード屋の仕事をやりきったと思えた時に、改めて今後の人生でほかに何ができるのかと考えました。
そして、20代の頃に取り組んでいたリハビリテーションに関する研究をもう一度したいという思いに至り、大学院受験を決めました。
手や足に麻痺がある方の多くは、脳出血や脳梗塞などの脳疾患が原因になっています。
学生時代、身体に麻痺のある患者様が辛いリハビリを繰り返し一生懸命に取り組まれている様子を見て、なぜ原因は脳にあるのに脳に直接働きかけられないのか、より効率的かつ効果的で負担の少ないリハビリ方法があるのではないかと考えていました。当時はそうした視点での技術や研究は無かったのではないかと思いますが、私が40歳になって今後の人生を悩んだ時には、脳活動を可視化できる時代になっていたのです。これならば、私が20代の頃には実現できなかった新しいリハビリテーションをつくることができるのではないかと考え、もう一度研究したいと思い大学院に入り直しました。 - 今後の展望をお聞かせください。
- 現在、複数の企業と共同で研究を進めています。企業が私の研究に興味を持ってくださるということは、社会的にニーズのあることが研究できている証拠なのだと思います。そうした意味でも、企業との共同研究をとても大切に考えています。今後も企業と協力して研究を進め、その成果を社会に実装していきたいです。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。