サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- 『エアアートマトリクス』で空調を絵画で表現!万博出展『未来の温度計』の姿とは?!
開催日: 2025年4月17日


○活動の主旨、目的○
今週の木曜サロンでは、空調とアートを融合させた新たな温度表現手法「エアアートマトリクス」についてお話いただいた。
「エアアートマトリクス」は、センサーで取得した環境・行動・天気・ニュースなどの情報をもとに、生成AIが感性的な画像を生成し、空気の状態を視覚的・芸術的に表現する取り組みで、この技術は、大阪・関西万博のサントリーとダイキンによるレストラン内や羽田空港内での展示されており、「未来の温度計」として注目を集めている。
科学と芸術の融合によるこの試みは、空調の未来を考える上で興味深い内容であり、参加者に新たな視点を提供する貴重な機会となった。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
吉川 隆敏 氏
国立大学法人 大阪大学 先導的学際研究機構付属 暮らしの空間デザイン 特任研究員

神戸大学工学部を卒業後、三洋電機株式会社に入社しワープロや携帯電話の事業に携わる。
その後京セラ株式会社で基地局や自動運転に関わる研究開発に従事。
2023年より大阪大学 先導的学際研究機構付属 暮らしの空間デザインICTイノベーションセンターに勤務。ダイキンとの包括連携のなかで、空調に新たなイノベーションを起こすべく研究に励む。
ナレッジドナーインタビュー

- 「エア・アートマトリクス」の開発に至ったきっかけについてお聞かせください。
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数年前にダイキン工業から、「新体操をしている人物が羽ばたいているような画像を作成してほしい」という依頼をいただいたことがきっかけになりました。当時生成AIでの画像作成はモノ好きがするものという雰囲気があったこともあり、私も遊び半分で画像を生成してみたのですが、これが予想以上に興味深かったのです。
ダイキン工業の「見えない空気をいかに見えるようにするか」というテーマを具現化するにあたり、空間をテクニカルに表現する3D表現に加え、パッと見るだけで空間の素晴らしさを魅せられる新たな試みとして、画像生成AIの技術を導入しました。
その後に開催された渋谷でのイベントでは、この時に試作したセンシング情報を活用し、元々持っていたエア・アートマトリクスの原型となるアイデアをベースに、より多様な画像を生成できないか試行を重ねました。
そうしたところ、この技術は将来的に大阪万博で使えそうだな、空港で活用してみたら面白いかもしれない、シェアオフィスなんかにも良さそうだと、さまざまな分野に広がっていき、各方面からお声がけいただくようになった次第です。 - 今後の展望をお聞かせください。
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私の研究の本流は、建物全体を制御してスマートなビルディングにしよう、スマートシティにしていこうというものです。今後も人間の感性の仕組みについて更に研究し、世の中の雑多な環境情報を可視化していきたいと思っています。
例えば、「人が何をもって心地良く感じるか」という感性の仕組みは、人間自身でも分からない部分があります。よく言われるのが、暑い日にエアコンで室温を1度下げるより、風鈴の音色を聴くほうが涼しく感じることがあるということです。風鈴の音色を聴くだけで涼を感じるメカニズムはまだ解明されていませんが、ひょっとしたら「風鈴が鳴る=風が吹いている=涼しい」という認識で涼を感じているのかもしれません。
それも一つの人間の感覚ですし、そのようなものが世の中には沢山あります。だからこそ生成AIを活用し、複雑な情報を一旦言語化し、画像にして集約し、「情報を可視化」するのです。
このような生成AIの活用が、これまで解明されなかった人間の感性の仕組みを理解するための大きなキーポイントになっていくのではないかと思っています。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。