サロンイベントレポート

木曜サロンレポート

テーマ:
今こそ知っておきたいELSI(エルシー)のはなし-倫理的・法的・社会的課題について考える-

開催日: 2025年6月26日

○活動の主旨、目的○
今回の木曜サロンでは、大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)所属の肥後楽氏を講師に迎え、「今こそ知っておきたいELSIのはなし」と題して講演を実施した。
ELSIとは、科学技術の社会実装に伴う倫理的・法的・社会的課題のことで、生成AIをはじめとした先端技術に潜むリスクやバイアス、ジェンダー問題などが取り上げられた。
また、阪大とメルカリR4Dによる共同研究の事例を通じて、企業と大学が連携して社会的責任を担う必要性を説明いただき、技術と社会の関係を多角的に捉える重要性を参加者が実感する機会となった。

ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール

肥後 楽 氏
大阪大学 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)特任助教

大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は、音楽学、文化政策学、協働形成。
2015年より大阪大学21世紀懐徳堂にて、大学広報・アウトリーチ活動の企画運営に携わる。
2020年より大阪大学ELSIセンターで、企業との共同研究や学内他組織との共創研究など、学内外の組織をつなぐ取り組みに従事。
2023年8月~2025年3月まで、クロスアポイントメント協定により株式会社メルカリの研究開発組織mercari R4Dにリサーチャーとして勤務。

ナレッジドナーインタビュー

  • 現在は日本各地にELSIセンターが設立されつつあると仰っていましたが、ELSIは世界的にも普及しているのでしょうか?
  • ELSIは、元々は、1990年にアメリカでスタートしたゲノム解析プロジェクトの中で誕生した言葉です。ヒトゲノム計画研究予算の3%(後に少なくとも5%)をELSI研究支援に当てることが義務付けられました。
    欧州では、第4次のEU枠組みプログラム(1994〜1998年)において、ELSIと同様の内容が、ELSA(AはAspect:側面)として実践されました。最近では、「レスポンシブルリサーチ・アンド・イノベーション(RRI:Responsible Research and Innovation、責任ある研究イノベーション)」という、より広い概念が導入されています。
    このように、ELSIは欧米を中心に発展してきた概念であると言えますが、2020年前後から、日本においてもELSIについて研究するセンターが全国各地に設立されています。
  • 今後の展望などがあればお聞かせください。
  • 本日の講演では、大阪大学において初めて人文社会科学系のメルカリR4Dラボ・大阪大学協働研究所ができるということをご紹介しました。企業の方と人文社会科学系の研究者が産学連携で関わるということは、理系の分野に比べるとまだ事例が少ない状況です。ですが現在生じている複雑な社会課題について考えるためには、人文社会科学分野の知見が必須であると思っています。また、研究者も企業の方も一緒になって、多様な専門性を持った人々が共に検討していくことはとても重要です。この協働研究所において、さまざまな研究領域をつなぎ、人文社会科学の知を社会実践へと発展させていく活動を今後も続けていきたいと思っています。

※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。

木曜サロンとは

幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。

ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

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