サロンイベントレポート

木曜サロンレポート

テーマ:
ホタテ殻をヘルメットに-東大阪発!SDGsの逆風を逆手に取ったものづくり-

開催日: 2025年7月3日

○活動の主旨、目的○
今回は、「ナレッジイノベーションアワード」にて準グランプリを受賞した、甲子化学工業株式会社 企画開発部部長・南原氏にご登壇いただいた。南原氏は、北海道で年間16万トンも廃棄されるホタテ貝殻を再資源化し、独自素材「シェルテック」を開発。CO2排出量の削減や強度にも優れ、現在では年間6万トン規模での活用が可能となり、環境配慮型素材として注目を集めている。
「シェルテック」は、防災用ヘルメット「ホタメット」に加え、建築用モルタルやコンクリートに使う砂の代替、さらに海岸のテトラポットなど、幅広い分野での実用化が進んでいる。今後はこの素材を活用して遊具を製作し、公園を整備することで、かつては廃棄物だった貝殻が人々の集まる場所へと生まれ変わる未来を描いているとお話された。「iF DESIGN AWARD 2024」金賞の受賞や大阪・関西万博での採用といった成果も紹介され、地域資源を価値に変える発想力と行動力に、参加者から大きな関心と共感が寄せられた。

ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール

南原 徹也 氏
甲子化学工業株式会社 企画開発部部長

1987年大阪府大阪市生まれ。関西大学卒業後、大手ゼネコン企業に入社。建設現場での施工管理・大型機械の設置計画などの仕事に従事する。2019年、甲子化学工業株式会社の3代目跡継ぎとして入社。ドアノブに装着し腕でドアを開閉できるアタッチメントや、ホタテの貝殻から作られた環境配慮型ヘルメット「ホタメット」の開発を手掛ける。

ナレッジドナーインタビュー

  • ナレッジイノベーションアワードの受賞者の方々との交流はございますか?
  • 『DENDEN-01』という人工衛星の取り組みでグランプリを受賞された関西大学の山縣雅紀先生と仲良くさせていただいています。つい先日も我々の工場にお越しいただきました。
    人工衛星は様々な要素技術の組み合わせでできており、山縣先生は元々”素材”が専門の方なので、我々が素材から作るところに興味を持たれて「何か一緒に出来る可能性があれば面白いね」という話をしています。ホタテ殻からできた素材が、いつか深海や宇宙に飛び出していったら我々も嬉しいですね。
    かつて東大阪では「まいど1号」という人工衛星が開発され、町自体の盛り上がりにも繋がりました。今のモノづくり業界は、景気も悪く若者からの人気も無いため、閉塞感の強い状況です。まいど1号のように、我々もそうした状況を打破できるような取り組みが出来れば面白いなと思っています。
  • 様々な製品の開発を行う中で最も苦労することは何ですか?
  • 現場に行かないと分からなかったり、解決しないことが多すぎることが、最も大変だと感じます。
    ChatGPTのようなAIツールも役に立つかもしれませんが、あくまでネット上にあるソースから情報を提供するツールなので、新たな開発に有効だとは限りません。
    実際に問題の本質を見つけ、そのキープレイヤーを見定めて提案する、といった場合にはやはり自分の足で稼ぐ必要があり、その大変さは今でも続いているなという感覚です。
    失敗談は日々あります。イメージでは上手くいく材料の組合せなのに実際は上手くいかなかったり、この人は仲間になると思ってこちらの情報を共有したところ連絡が付かなくなり、気がついた時には競合相手になっていたという事もありました。そういった場合は”ノイズ”だと割り切ります。
    開発は自分たちが初めに思い描いたことを見定めてブレずに前に進め、お客様の要望があれば我々の知見でそれを解決していく、という姿勢を大切にするようにしています。

※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。

木曜サロンとは

幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。

ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

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