サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- DX化でピザ屋が儲かる!? -社会が変わる、DXと“サイバートロフィ”のはなし-
開催日: 2025年9月11日
○活動の主旨、目的○
日本では、DX=デジタル化による業務効率化と捉えられがちだが、DXの本質は「体験そのものの再設計」にある。その代表的な事例がドミノ・ピザで、ドミノ・ピザは、味ではなく、ピザトラッカーやアプリ注文のゲーム性、到着時間の可視化といった顧客体験を改善したことで投資家から「IT企業」と評価され、2010年から2024年で株価を50倍に成長した。この事例から、デジタル化はあくまで手段であり、DXの核心は“体験の変革”にあることがわかる。
また、制度設計思想がソフトウェアからプロトコルへ進化し、プロトコル自体が制度を構築する新たな社会設計への可能性を示すWeb3。「信頼」「貢献」「行動」などの評価基準をコード化し分散的に管理する仕組みで、プロトコルそのものがルールを実行する。そのため、Web3こそがDXを根本から支える技術であるといえる。
このWeb3とGPS、AR、ソーシャル、UGC、を組み合わせたジオソーシャルプラットフォームであるサイバートロフィーは、実世界での行動変容を促し、一時的なオンライン接続を超えた深いつながりを提供するもので、その核となるのは「訪問の証明」「貢献の証明」「評判の証明」であり、参加や貢献を証明するデジタルバッジ(トロフィー)を通じて、体験と貢献が評判を形成し、継続的な参加を促進するポジティブなサイクルを生み出すとのこと。
現在、大阪大学New-PODと連携し、地域貢献にも活用されている。
サイバートロフィーは、「プロトコルの時代」にふさわしい制度設計を実装するコミュニティOSであるとお話された。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
泉 征弥 氏
株式会社コンティニュウム・ソーシャル 代表取締役社長
コロンビア大学大学院にて修士号取得。日本興業銀行にてITやリスク管理の仕組み作りに携わった後、米系資産運用会社にて株式の運用やモデル開発を担当。その後は、AIやゲノム、ブロックチェーンなど先端技術を活用した複数のベンチャー立ち上げや事業開発を推進。
カナダ発のWeb3スタートアップContinuum.Socialの日本代表として、二条城や大阪・関西万博でのプロジェクトを実施し、観光や健康分野での新しい体験づくりに取り組む。アジア初のメタバースアワードでNFT部門賞を受賞。現在は大阪大学大学院工学研究科の招へい教員としても活動中。
ナレッジドナーインタビュー
- サイバートロフィーのアプリ開発にあたり、苦労したことはありますか?
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開発の部分で苦労したという事は特にないのですが、どちらかといえばWeb3について周囲に理解していただくことが大変でした。Web3は多くの人にとって、依然として「投機的でリスクの高い領域」という印象が強く残っています。
ブロックチェーンやNFTの説明を行う際も、「危険」「ネガティブ」と受け止められる傾向があります。
そのため、サイバートロフィーがそうした投機性とは無縁で、社会的価値創出を目的とするプロジェクトであり、ブロックチェーンの本質──すなわちゲーム理論の応用による協調メカニズムの設計──を実現していることを理解していただくには時間を要しました。
ブロックチェーンの原点は、個々の利得を動機づけながらも、全体として公正で信頼できる秩序を生み出す分散的なインセンティブ設計にあります。これはまさにゲーム理論が追求してきた「自己利益と社会的最適の両立」の仕組みであり、投機ではなく協調のための経済設計です。
サイバートロフィーはこの仕組みを現実社会に応用し、人々の行動や貢献を可視化しながら、地域や企業、行政を結びつける“社会的トークンエコノミー”を構築しています。つまり、ブロックチェーンを「投機の道具」ではなく、「信頼と共創のための社会的インフラ」として再定義する試みなのです。
とはいえ、米国では最近Web3に関する捉え方が大きく変わり始めていて事業をやりやすくなってきているなと感じますし、日本もそれに追随して今後徐々に変わっていくのではないかと期待しています。 - 今後の活動の抱負などあればお聞かせください。
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大阪・関西万博が10月13日で閉会します。弊社はこの万博で、大阪ヘルスケアパビリオンの「2025年大阪・関西万博リボーンチャレンジ事業」に採択されたことをきっかけに、様々な事業の話を進めることができました。
この万博開催期間での経験を糧に、今後は自分たちの力でどんどん動いていける状況になってきているなと感じています。まずは、今後1年程を目途にサイバートロフィーのユーザー数を大幅に増やしていきたいと思っています。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

