サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ：
- ニッチ零細家業を継いだアトツギ社長が、25年間増収増益・グループ経常利益10億円に成長させた経営戦略
開催日： 2025年10月2日
○活動の主旨、目的○
環境機器株式会社は、業務用の殺虫剤や防虫資材を全国の白アリや防虫会社に販売するニッチなBtoB商社であり、マーケットの約半分のシェアを持つリーダー企業となっている。
銀行勤務を経て30歳で家業に入り、35歳で社長に就任した片山氏は、社長就任後、ものづくりへのこだわりや技術がないのではと考え、商社へ業態転換。強みを活かしてアプローチを変えたことで、取引関係は変わっていないにもかかわらず業績が伸び、近年4社をM&Aして利益を拡大している。
片山氏は業界の地位向上とイメージ改善を目指し、科学的な分析やコンサルティングを重視。シロアリ対策では住宅の資産価値を守る定期点検サービスが必要となるため、その知識や仕組みも整えているとのこと。
また、同社の成長の要因は差別化と回収エンジン、商品開発、利他的な経営姿勢、独自の組織文化にあるとのことで、顧客に対し「当社から買ってもらう理由」を構築してリピート注文につなげている。
無料のセミナーやCRMソフト提供などで顧客課題を解決し、ニッチであるため高付加価値な商品開発をする。
そして「会社の目的は、全社員の物心両面の充実と社会貢献」という経営理念のもと、フラットな組織で情報共有とチームワークを重視していると教えていただいた。
今後はAI活用による防虫DXのグローバル展開、事業承継支援、途上国での感染症予防事業への取り組んでいきたいとお話された。
ナレッジドナー（知の提供者）プロフィール
片山 淳一郎 氏
環境機器株式会社 代表取締役
京都大学法学部卒業。外交官試験のため留年するが、父の急逝で方向転換、新卒で日本興業銀行に就職(京都支店勤務)。同行退職後、アジア経済研究所開発スクール(東京)、ケンブリッジ大学経済学部大学院(イギリス)を経て、大阪に戻り零細町工場であった家業を継ぐ。社長就任後25年間増収増益で昨年も最高益更新。また、公益財団法人日本国際民間協力会の副理事長兼事務局長も務める。高校時代に水球で国体、インターハイに出場。
ナレッジドナーインタビュー
- 企業風土を変えたことによる社員の変化や、当時の片山様が心掛けていたことについてお聞かせください。
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零細企業の幹部社員にありがちな、「朝一番に出社して最後まで残る」という前時代的な責任感を持って仕事に取り組む幹部がかつて当社にもおりました。しかし普通の社員はそこまで信念は持たず、なんとなく仕事をしている方も多いですよね。
私は先に述べたようなタイプの幹部社員のアンチテーゼとして入社しましたが、当時の社員に対して「これから我が社は町工場のメーカーから商社に変わります。あなたたちも頭を切り替えてください。」と、大きな声で宣言することはしませんでした。
社員にはこれまで同様に既存顧客相手に仕事をしてもらいながら、相手が抱える経営課題を聞き出して解決の手助けもできるような、「顧客の利益を優先的に考えた最善手は何か」を考え、実践してもらうようにしました。これまでの仕事に新たな任務を追加しますよ、といった感じです。
そうすることで、これまで何となく働いていた社員も出来ることが少しずつ増えていき、振り返ってみたら会社の業績も伸びて給料も上がり、自然に仕事にやりがいを覚えるようになっていた、という感じなのです。方針転換をしたことで仕事のやり方も変わっていきましたが、それが原因での退職者はごく一部でした。 - 企業買収・事業承継をする際は「その会社で働いている方の幸せを考える」という言葉の真意について、詳しくお聞かせください。
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一般的に顧客の会社を買収することは他の業者との競合関係を産んでしまうため、業界ではタブー視されています。しかし、私たちは「利他の精神」で日々取り組んでいるので、対象となる会社の顧客や従業員のため、ひいては業界全体のレベルアップ発展に貢献するという大義名分を追及できると判断した場合には買収のような戦略を選択することもあります。
実際、2024年にシロアリ防除で高い実績を持つ名古屋の株式会社雨宮を買収・事業承継した際にも、業界内の反発は少なく概ね好意的に受け入れられました。
大義名分を追求するほど結果として売り上げと利益率も高まるので、利他的であることは最強の経営戦略であると信じています。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー（知の提供者）」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。
