サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- 30以上の事業企画ノウハウ凝縮!事業づくりの失敗を防ぐ「W Model」
開催日: 2025年10月23日
○活動の主旨、目的○
遠山氏がこれまでの経験から編み出した「W Model」は、新規事業に必要な「魅力」「実現可能性」「成長性」のバランスを思考手順として体系化したものである。ニーズ(魅力)とシーズ(実現可能性)を初期段階で安易に結びつけると失敗しやすいため、それぞれをまず独立して深く掘り下げ、最後に本質を踏まえてマッチングさせる点が特徴となる。
まず、初期アイデアをエレベーターピッチで明確化した後、シーズを掘り下げる。ここではSWOT分析のような表面的な整理ではなく、強みと弱みを表裏一体としてとらえ、機能ではなく顧客の真の欲求まで掘り下げる「価値分析」が重要となる。その際、思考を広げ本質を抽出するための強制発想の手段として「マンダラート」も有効であると紹介された。
次にニーズの掘り下げについては、「お客さんの言うことを聞いてはいけない」と強調された。顧客は非日常的なことや常識に囚われやすく、真の課題を言語化できないことが多いため、発言よりも「オブザベーション」によって行動の事実を収集し、カスタマージャーニーマップで整理し、行動の裏にある感情や思考を読み解くことが重要となる。また、BtoBでは企業の風土やITスキルといった表に出てこない情報が影響するため、BtoBこそペルソナ分析が効果的であると説明された。
さらに事業の土台となる環境把握には、人の感覚は市場データとずれがちであるため、データに基づくアプローチが必須であるという。PEST分析によって環境変化を定量的に捉え、市場の変曲点を予測する。そして、その変曲点に影響を与える重要かつ不確実な要素を2つ抽出し、それぞれに2つの可能性を設定することで4つのシナリオを作り、どの方向にも対応できる事業アイデアを導き出せるとお話された。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
遠山 修 氏
T Data Management 代表
京都大学大学院工学研究科にて修士号取得。
ミノルタカメラ(現コニカミノルタ)に入社後、ソフト開発、システム企画/開発、商品企画などを担当。30に及ぶ商品企画に参画。近年では、医療・介護分野においてAIを用いた新規事業を企画立ち上げからアルゴリズム開発、上市から運用まで主導。現在は、コニカミノルタ勤務にて製造分野のDXサービス新規事業の立ち上げと社内DXの推進を進める傍ら、新規事業立ち上げ・AI開発を支援する事業「T Data Management」を立ち上げ活動中。
ナレッジドナーインタビュー
- 『W Model』の開発に至ったきっかけについてお聞かせください。
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多くの新規事業企画を経験したことが背景にあります。行き当たりばったりに企画を進め経験を積んでいくなかで、「結局どんな企画も同じポイントを押さえられなければうまくいかない」という結論に辿り着いたことが1つのきっかけになりました。
もう1のきっかけは、企画にあたって外部の先生の力をたくさん借りた経験でした。様々な先生に、二軸展開やマンダラートなどの企画立案に有益な手法を教わりましたが、先生は特定の分野に特化したエキスパートなので、それぞれの先生から得た知識の断面を企画全体に繋げていくことがなかなかできませんでした。それならば自分で仕組みを作ってみよう、ということでW Modelの開発に至りました。 - ご紹介いただいた5つのステップのなかで、特につまずきやすいポイントはありますか?
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特に「片方だけを掘り下げてしまう」ということに注意が必要です。
W Modelの要素にSeeds(実現可能性)とNeeds(魅力性)がありますが、どちらから一方を深く掘り込んで、もう片方の掘り込みが浅くなってしまうと最後のマッチングが上手くいきません。
人はどうしても自分の得意なものから深く掘り下げてしまうので、例えばNeedsから始めた人はSeedsの方は浅くなってしまったり、その逆になってしまったりするパターンもあります。ここが正につまずきやすいポイントだと思っています。
また、どんなに注意しても自分の指向に合ったデータを集めてしまう傾向もあります。担当者によって結果に偏りが出ることもあるので、異なる情報を元にデータ数をたくさん集めてから判断するように気をつけることも大切です。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

