サロンイベントレポート
木曜サロンレポート
- テーマ:
- 第3の聴覚経路『軟骨伝導』で変わる聴こえの世界
開催日: 2025年11月6日
○活動の主旨、目的○
今回の木曜サロンは、株式会社CCHサウンド代表取締役の中川氏をお迎えし、軟骨伝導の技術やその可能性、社会的応用についてお話を伺った。
軟骨伝導は、奈良県立医科大学の細井裕司教授が2004年に発見した、気導・骨伝導に続く第三の聴覚経路である。耳の軟骨を振動させて外耳道内に音を発生させ、鼓膜を介して聞く仕組みで、骨を振動させる骨伝導とは異なる。この技術は骨伝導に比べ、痛みがない、低消費電力、音漏れが少ない、完全ステレオ再生が可能といった特長を持ち、耳穴を塞がないため周囲の音も自然に聞こえるという。すでに製品化もされており、オーディオテクニカ社のヘッドホンやティ・アール・エイ社の集音器が発売されている。
特に、窓口用軟骨伝導イヤホンは、全国の役所や銀行など約650機関に導入され、会話時のストレス軽減に役立っているとのこと。さらに、騒音性難聴の予防や認知症リスク低減、被災地での活用など、社会課題の解決にもつながることが期待されており、今後は、この技術を芸術、福祉、未来産業へと広げ、「聞こえの文化」を世界に発信していきたいとお話された。
ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール
中川 雅永 氏
株式会社CCHサウンド 代表取締役
京都大学農学部を卒業後、長年にわたり都市開発や地域振興の分野で活躍。独立行政法人都市再生機構西日本支社副支社長、公益財団法人関西文化学術研究都市推進機構常務理事などを歴任し、関西圏や首都圏のまちづくりと産官学連携に尽力。その後、京都府参与や奈良県立医科大学MBT研究所参与、MBTコンソーシアム特別顧問などとして、産学官住連携の推進に携わる。
2022年、奈良県立医科大学学長補佐就任、2023年より、軟骨伝導技術を応用した製品開発を手がける株式会社CCHサウンド代表取締役社長に就任。「聴こえ」の新しい可能性を社会へ広げている。
ナレッジドナーインタビュー
- ヘッドホンの開発にあたって、オーディオテクニカの軟骨伝導研究に対する反応はどのようなものでしたか?
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彼らは専門性が非常に高いので、軟骨伝導が画期的な音の伝え方だということも研究されて、特許についても随分と調べられたのだろうと思います。軟骨伝導ワイヤレスヘッドホンの開発も、我々から特許を売り込んだ訳ではなく、オーディオテクニカさんから製品化の打診をいただいたと聞いており、こちらとしても願ったり叶ったりということでライセンス供与の契約を結んだという経緯です。
我々はあくまでもライセンスを供与することがメインビジネスなため、製品化はどうしてもメーカー頼りになってしまいます。そのメーカーさんをどうやって探していくのかということは、我々の最重要課題でもあります。 - 軟骨伝導製品に対するユーザーからの反応についてお聞かせください。
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いま、軟骨伝導を用いて音を聴く商品には、周囲の音を大きくして聞き取りやすくする「集音器」と、音楽鑑賞などを主な目的とした「ヘッドホン」の二種類があります。
ヘッドホンは先にもお話ししたオーディオテクニカさんに作っていただいているので、「オーディオテクニカらしい特徴が出ている」と高評価で、10万台以上購入いただいていることから、同社のファンの皆様にも受け入れられているのだろうなと感じています。
一方の集音器については、人の耳の聞こえ方は千差万別なため、なかなか万人に受け入れられるものを作ることは難しいと思っています。
補聴器であれば利用者に合わせて緻密に調整できるものの高価になってしまいますし、そこまでの性能を求めない方も多くいらっしゃいます。そこで、安価である程度使い勝手が良いものをと、軟骨伝導の集音器を開発しました。この製品がぴったり合ったお客様には非常に評判がいいのですが、合わない方も必ずいると分かっているので、購入を検討されている方には事前に製品を体験してもらう機会を設けるようにしています。そして性能に納得していただいてから購入していただくという、地道な販売方法を実践しています。
この集音器の使い方を工夫した、耳の遠いお客様との対話を一時的にサポートするための「窓口用軟骨伝導集音器」という製品もあります。現在は役所や病院、金融機関などで導入していただいており、こちらについては非常によく聞こえると百発百中でご好評をいただいております。
※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。
木曜サロンとは
幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。
ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

