サロンイベントレポート

木曜サロンレポート

テーマ:
CG可視化とMR体験による“堺の火縄銃製造技術”歴史再現プロジェクト

開催日: 2026年5月7日

○活動の主旨、目的○
1543年に種子島へ伝来した火縄銃は、日本の鍛冶職人が独自に製造技術を解析・発展させ、堺・国友・日野などの拠点で大量生産されるに至ったという。しかしその製造技術は各拠点の秘伝とされ、内部構造や製造の詳細が十分に知られていなかった。
転機となったのは2014年、堺の鉄砲鍛冶である井上関右衛門住居跡で発見された2万点超の古文書で、関西大学なにわ大阪研究センターと堺市が共同でその解読・研究を進め、研究成果をもとに火縄銃の製造工程をCGで可視化するプロジェクトが始動した。実物の火縄銃をレーザースキャンして精密なCGモデルを作成し、鍛造・研削・ネジ切りといった工程を映像化するまでに約3年を要したとのこと。映像は、堺鉄砲鍛冶屋敷ミュージアムや種子島の鉄砲館で展示されている。
さらに、ヘッドマウントディスプレイを用いたMRコンテンツも開発しており、仮想空間の的を狙う体験を通じて、火縄銃の発射メカニズムを体験できる仕組みであるという。こうした取り組みをさらに発展させるべく、今後はゲーミフィケーションの強化やAI活用、地域振興や歴史教育への展開も見据えているとのこと。歴史研究・デジタル技術・体験を組み合わせる「文化イノベーション」によって、伝統文化を次世代へ伝える新たな手法を切り拓いていきたいとお話された。

ナレッジドナー(知の提供者)プロフィール

林 武文 氏
総合情報学部 総合情報学科 教授/関西大学博物館 副館長/関西大学なにわ大阪研究センター センター長

1983 名古屋大学大学院工学研究修士課程修了
1985 -1994 NTT電気通信研究所
1988 -1991 国際電気通信基礎技術研究所(出向)
1992 博士(工学)(名古屋大学)
1994 - 現在 関西大学総合情報学部
視覚認知メカニズム、情報の可視化とヒューマンインタフェース、CGを用いたコンテンツ制作と情報発信などの研究に従事。

ナレッジドナーインタビュー

  • 火縄銃の製造技術をCGで再現していく中で一番困難だったことは何ですか。
  • 秘伝書に描かれている図を基にCGで再現しようとしても、製造工程についての情報が書かれておらず、不明瞭な部分が多いところが大変でした。例えば、銃身の鍛造工程を再現しようとしても、職人がどのような動きで素材を加工して造っていったのかという流れは、図を見ただけでは分かりません。
    おそらく鉄を高温で熱し柔らかくしてから、2〜3人がかりで作業をしていったのだろうと予想はできるのですが、図や文献に素材の寸法は載っていても、鉄の熱し方や鍛え方、鉄板の巻きつけ方や必要な作業人員数までは書かれていないのです。嘘を伝えてしまってはいけないので、鉄砲鍛治職人の実写映像作品を参考にしたり、有識者にも作品を見ていただいて、非現実的な動作にならないように修正を加えながらCGを作っていくのですが、「本当にその工程で造っていた」という確証はありません。そういった部分が、再現CGを手がけ始めて一番難しいと実感した部分です。
    現段階ではあれが我々の精一杯ですが、公開している映像を見た方からいただいたフィードバックも反映しながら、今後も引き続き精査していきたいと思っています。
  • 林先生の研究活動における、今後の展望をお聞かせください。
  • 歴史研究の成果を、最新技術を活用してどのようにコンテンツ化していけばより多くの方に受け入れてもらえるのか、といった部分に興味があります。特にMRやXRは非常に可能性のある技術だと思っており、専門知識がなくてもコンテンツを見て「面白いな、もっと触れてみたいな」と、感覚的に捉えやすいところが良く、そういった部分の有効な活用方法が今の私の研究テーマになっています。
    現在も各所で作品を展示してはアンケートを取っており、年齢層や体験時間、特に人気のあったコンテンツのデータから評価指標を設けて、より有効なコンテンツのあり方を検討しています。

※木曜サロンレポートはナレッジサロン会員さまを対象としたイベントのレポートです。

木曜サロンとは

幅広い「知」に出会える、気付けるちょっと知的な夜、展開中。

ナレッジサロン会員様を対象に、毎週木曜日の夜に開催。幅広い業種業界から「ナレッジドナー(知の提供者)」としてゲストスピーカーを招き、専門知識や経験、取り組んでいるプロジェクトや生活の知恵まで幅広い「知」を提供。参加者同士の交流や会話を尊重し、自由で気楽な会話を中心としたカジュアルなサロンです。

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