アルスエレクトロニカ イン ザ ナレッジキャピタル

コンピュータは、遊びや遊び心を持った体験を生みだす技術として使われてきました。 この技術から生まれたインターフェイスやプログラミングに重要な“アルゴリズム”の考え方は、ゲームばかりでなく、教育、社会、創造的な分野にも取り入れはじめられています。
遊び心のある遊具によって、都市を人々が参加できる場所に変えるデイリー・トゥレジュール、独自のアルゴリズムで、コンピュータから生まれる新しい遊びの可能性を見せる藤木淳。この企画展では彼らの作品展示やトークを通じて、現代の遊びが社会にもたらす意味を考え、遊びを通じた新しい教育や社会参加の形を提案します。

デイリー・トゥレジュールDaily tous les jours(CA)

メリッサ・モンジャとモウナ・アンドラオスによって設立され、カナダ・モントリオールを拠点に活動するデザインスタジオ、アーティストグループ。公園や広場のような公共空間に大規模なインタラクション作品を設置するプロジェクトを数多く手がけ、作品との出会いによって公共空間と人々の間に新たなストーリーと遊びを生み出す試みを続けている。

展示作品 Musical Shadows

公共の広場に知らない人同士の共通体験を作り出す作品です。地面に置かれたパネルの上に影が落ちると、録音した人の声から作られた様々な音が鳴り出します。鑑賞者は互いの影が作り出す音によってセッションをしたり、一期一会で生みだされる非日常的な体験を他の人達と共有することができます。

藤木 淳Jun Fujiki (JP)

人間が持つ空間認識や物理的な感覚、あるいはリアルとバーチャルの境界を探るため、独自のプログラミング/アルゴリズムを用いてインタラクティブな作品を制作する。鑑賞者は作品で遊ぶ中で新しい物理法則やモノの見方を体感することができる。
Prix Ars Electronica 2008 Interactive Art部門、Prix Ars Electronica 2012 Hybrid Art部門で、それぞれHonorary Mentionsを受賞。

展示作品 P055E5510N

動き回る大勢のキャラクターの中から自分が操作しているキャラクターを見つけ出し、旗まで誘導するゲームライクな作品です。この作品には複数のバージョンがありますが、いずれも体験者は画面内で動くキャラクターに憑依する感覚を得ます。

展示作品 OLE Coordinate System

画面の中で、キャラクターが通常の物理法則に寄らない徘徊行動を行なう作品です。それぞれのキャラクターは固有の3次元空間情報を与えられていて、ブロックや階段といったオブジェクトに対して物理法則に基づかない行動を可能にしました。作品名のOLE Coordinate Systemとは、この「俺の座標空間」のことなのです。

展示作品 Constellation

体験者によって空間に置かれた点群から人や犬、鳥、地面などが浮かび上がって動き出す作品です。配置された点の位置関係により、点から生まれた形は、自動的に生成、消滅、変身、変形を繰り返します。

展示作品 .PET24

点の集合から仮想生命が生まれる作品です。画面上に24個の点があります。視点の位置から左右対称でバランスの取れた骨格が見つけ出され、仮想生命が生成されます。24秒間の寿命が尽きると通常の点に戻り、また別の骨格をもった仮想生命が生まれます。体験者の操作で視点が変わると、点の位置が変わり、生命の姿も変化します。

アルスエレクトロニカ・フューチャーラボArs Electronica Futurelab

アルスエレクトロニカのR&D部門として1996年に設立。シンクタンクとスタジオの機能を持ち、アルスエレクトロニカ内外において未来を考えるプロジェクトを実現する。

展示作品 Flower of Time

時間についてのイメージと、時間の使い方のアイデアを視覚化した参加型の作品です。
回転速度が異なる時計の針の周りに、来場者によって書かれた時間についての様々なアイデアの花びらが置かれていきます。来場者によって作られた時間の花は、人それぞれで異なる時間や、状況によって伸び縮みする時間に対する感覚を明らかにするでしょう。

アルスエレクトロニカArs Electronica

オーストリア・リンツに拠点を置く、メディアアートの世界最高峰の機関。毎年9月にアート・テクノロジー・社会をテーマに行なわれる「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」の他、メディアアートの最先端コンペティションである「プリ・アルスエレクトロニカ」、美術館・科学館としての「アルスエレクトロニカ・センター」、R&D機関である「アルスエレクトロニカ・フューチャーラボ」の4部門があり、日本からも多くのアーティストが参加している。

アルスエレクトロニカ・センター
photo: Nicolas Ferrando,Lois Lammerhuber
スペシャルプログラム参加メンバー

久納鏡子(AT/JP)

アルスエレクトロニカ・フューチャーラボのアーティスト/リサーチャー。これまでインタラクティブアート分野における作品を多く手がけると共に、公共・商業空間での演出や展示造形、企業や大学との共同プロジェクトを行うなど幅広く活動している。